自分の気持ちを自分の言葉で伝える店員が売り上げを高める

「今日、初めて売り方がわかりました。こんな簡単で楽しいものだったんですね!」

——これは、私のセールステクニック講座を受講した鹿児島県の定食屋さんのパートの方たちからいただいたお言葉です。彼女たちが目を輝かせて楽しそうにおすすめをした結果、このお店の売り上げはかなり増えました。

おすすめを成功させるためのシンプルな方法があります。

もちろん商品自体が心からおすすめしたい商品であることが前提ですが、私がお教えするおすすめのテクニックはマニュアルや台本などは使いません。個々のスタッフが自分でセールストークを作り出すというものです。

しかも、お店が決めた「おすすめ商品」ではなく、各人が心から紹介したいと思ったもののセールストークを作ってもらいます。そのためにはまずは、試食をして、自分が気に入った商品、お客さまにおすすめしたい商品を決めます。

次に、「なぜその商品をおすすめしたいのか」の理由を説明してもらいます。そのときに出る素直な感想、つまり一消費者としての感想が、そのままその人のセールストークになります。

シズル感で勝負「キンキンに冷えています」「鉄板でジュージュー」

ただし、セールストークには次の3つの要素のうち、最低でも2つを入れてもらうようにします。3つの要素とは「ポーション」「味の方向性」「シズル感」です。

ポーションとは量のことです。「一口サイズ」「みんなでシェアできる」「山盛り」「メニューには3種類と書かれているけれど、実は5種類が提供される」などです。

味の方向性は、「爽やかな酸味」「しびれる辛さ」「甘さは控えめ」などです。

シズル感は「キンキンに冷えています」「鉄板でジュージュー」「外側がカリッとして中はトロっと」「フワフワしている」などです。

須田光彦『絶対にやってはいけない飲食店の法則25』(フォレスト出版)

このうち最も大切なのが、シズル感です。シズル感はイメージが浮かぶように伝えるのがコツです。たとえば、「トロっ、と」だったら「何かが溶け出している」、「ジュージュー」だったら「肉汁がじわりと出てくる」絵が浮かぶといった具合です。

人間は70%以上の情報を視覚から得ているといわれているので、視覚化しやすい言葉は伝わりやすくなります。セールストークを聞いたお客さまは、それが本当かどうかを確認したくなってオーダーします。そして「本当にトロトロだ」「肉汁たっぷりだ」ということであれば、「損しなかった」「だまされなかった」「後悔しなかった」「このお店は間違いがない」となるのです。

ここで注意していただきたいのは、重要なのは単にそれっぽいセールストークを言うことではなく、スタッフが自分の気持ちを自分の言葉で伝えることです。

また、3つの要素は毎回まったく同じ言葉で説明する必要ありません。そのときの自分の感情に応じて、自然と出てくる言葉で伝えればいいのです。