しかもこれらの法制化された国では、乗り物そのものだけでなく、空港内にいる際のマスク着用が義務化されている。つまり、未着用者は出発段階で搭乗手続きの係員ともめるまでもなく、「当局により、その場で拘束」といった仕打ちが待っている可能性が高い。

病気や障害を理由に着用できない場合は?

仮に「マスク未着用」という行為に対する法整備を進め、違反者に罰金を伴う罰則を設けたとしても、依然として「病気や障害を理由にマスクできない人」への配慮なり制度設計は忘れるべきではないだろう。

「未着用者に罰金も適用する一方、できない人への配慮」を示すものとしてこんな例がある。英国では、政府が「マスク着用の免除を認める例」として以下のような定義を掲げている。

・身体的または精神的な病気、または障害のためにマスクなどを着用したり取り外したりすることができない人
・読唇術、明確な音、または顔の表情を頼りにコミュニケーションをとる必要がある人に話しかけている場合

英国では目下、空港施設や機内はもとより、公共交通機関の駅構内、車内でもマスク着用が義務化されており、初犯については100ポンド(約1万4000円)の罰金が科される。再犯の場合は倍ずつ増えていき、最高額は3200ポンドとなっている。

一方で、病気や障害などを理由にマスクの常時使用は厳しいという人に対し、英政府は「私はマスク着用免除者です」という札を作ってウェブサイトで配布している。

写真=筆者撮影
英国政府が配布しているマスク着用免除を示すカード

使用説明をよく読むと、「一部の人々はマスクを着用できず、その理由は外見では分からない可能性があることに注意すべき。そうした人々への配慮や敬意を払ってほしい」と、いわゆる「マスク警察」のようにマスク着用を絶対条件とする人々に対し理解を呼びかけている。なお、免除者に対する診断書などの携帯は求められていない。

免除者とは離れた席に座るなどの対応を

ちなみに、ロンドンから東京に向かう際、地下鉄で空港に行き、飛行機に乗るとなると、最寄り駅から機外に出るまで15時間以上、「着用義務」を果たさねばならない圧力にさらされるわけだが、免除対象の人は自主的にマスクなしで搭乗しても良いことになっている。

一方、運悪く「免除者の近く」に座ってしまったらどうしよう、という危惧もあるだろう。

「あなたならどうする?」と身近にいる英国人女性に意見を求めたところ「私は嫌なので、乗務員に席を替わりたいと言うわ!」と至極まっとうな答えが返ってきた。今はおそらく、コロナ禍で満席とは言えない状況だから、違う席があてがわれるなど、何らかの対応が期待できると思われる。