「コモディティ王」ガートマン氏の新ポートフォリオ戦略

「コモディティ王」と呼ばれるデニス・ガートマン氏も、「金はまだ強気相場が継続しており、弱いときには買ってよい」との見方を示す。ガートマン氏は一時、金について慎重なスタンスに転じていたが、最近の金価格の調整で再びポジティブになりつつある。

ガートマン氏は、金を買う方法として、ボラティリティの高い金鉱株より金上場投資信託(ETF)を勧めている。これはバフェット氏と真逆のスタンスである。そのうえで、ガートマン氏は、自身のポートフォリオにおいて、イールド・カーブの長期側をショートし、金市場をロングしたとしている。さらに、毎月配当を支払う高配当株もロングしている。長期金利の上昇を嫌気し、インフレと金利の上昇に対処していることになる。

さらに興味深いのは、ガートマン氏が新たに提示したポートフォリオ戦略である。従来の「60/40ポートフォリオ(株式60%+債券40%の資産配分)」から、「株式40%+債券40%+金などインフレ・ヘッジ20%」にすべき、としたのである。加えて、「さらに積極的にするのであれば、株式40%+債券30%+金30%にすべきである」とした。

江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)

実は、7月に刊行した拙著『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)で、私の持論である「株式・金・現金3分割法」のポートフォリオを紹介している。日本では株式投資の専門家は多いが、コモディティの専門家が少ないためなかなか理解されないようだが、拙著を知るはずもないガートマン氏が、図らずも私と似たような「ゴールドシフト」を推奨し始めたことは実に面白い。

注目すべきは、ガートマン氏が、金に資産の20%を配分する際に、債券からでなく株式から配分を振り分けている点である。ガートマン氏は株式についてあまり強気でないようである。

いずれにしても、市場の重鎮たちが、金をポートフォリオに組み込むことの有用性を説いてきた私の投資戦略にお墨付きを与えるような発言をしていることは、非常に心強く感じられる。

世界に遅れる日本の「投資ニューノーマル」

世界の著名投資家・学者などが金投資の重要性を説き始めている一方で、国内にはいまだに金投資に否定的な見解を述べる人たちが多い。

当のシーゲル教授がすでにゴールドシフトを進めているにもかかわらず、同じような1970年代、80年代からの長期的な金投資と株式投資の投資リターンの差をグラフで示し、シーゲル教授のかつての主張を紹介しながら金投資の無意味さを説くのである。

残念ながら、彼らの言い分は一部では正しいが、大部分では明らかに間違っている。

実は、2000年から現在までの20年間の金投資と株式投資のリターンの差は、比較する意味もないほど圧倒的に金投資のリターンが高い。ちなみに、この20年間で金価格は7倍以上になったが、米国株は2.5倍である。配当を入れても、金投資のリターンには及ばないのが「事実」である。