「株式優位派」シーゲル教授が金投資を説き出した

しかし、当時示されたデータは、「1800年代」からのものであり、現代の金融市場を取り巻く環境にそのまま当てはめるには、かなり無理がある。現在の金融政策は、歴史上経験がない緩和政策がとられ、明白な結果がまだ出ていない。それを考えると、「前提が変わった」、すなわち、過去のデータと比較することに意味がなくなったといって差し支えない。

シーゲル教授も最近になって、これまでの自身の金投資に対する見解を明らかに変え、金投資の効用を訴え始めている。これは私も含め、プロの市場関係者にとって驚きであった。

シーゲル教授は、「金融政策が長い間、拡張的な状態に据え置かれ、短期金利は米連邦準備制度理事会(FRB)が、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を介して操作し、雇用が回復するまで超低金利が維持される」としている。この点は、8月27日にFRBが「新戦略」として明示した、低金利政策の長期化からも十分に想定できるシナリオである。

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そしてシーゲル教授は、「長期金利はFRBが操作せず、結果としてイールド・カーブ・コントロールは採用されず、緩やかに上昇する」とし、さらに、「インフレは長期金利の上昇以上に上昇することで、結果的に実質金利はマイナスのままで推移し、これが金やコモディティ、実物資産の魅力を高める」としている。

「前提」が変われば「結論」も変わる

マイナスの実質金利が維持されれば、実物資産だけでなく、米ドルの下落にもつながる。FRBが打ち出した「新戦略」と呼ばれる、インフレ率の上昇を一定期間容認するという大胆な政策は、まさにドル安・金価格の上昇を促す格好の材料である。

経済が回復するにつれて流動性が高まり、これがインフレに油を注ぐ可能性がある。そうなれば、ますます金価格が上昇しやすくなる。

このような状況からも、これまで金投資に否定的だったシーゲル教授も、金価格の見通しに強気にならざるを得ず、金投資の必要性を説くにいたったのであろう。

これもバフェット氏と同じく「変節」ではなく、シーゲル教授なりの「時代の変化への対応」であろう。