では、日本の政治において、全体としての100点満点レベルというのはどういうものか。60点の及第点レベルというのはどういうものか。
ここを一生懸命に考えるのが学者やメディアの役割であり、彼ら彼女らの発信を通じて国民も考えることになる。政治に文句を言うばかりが学者やメディアの役割ではない。
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政治を数字で評価する際の2つのポイント
メディアを通じて政治を評する者の多くがよくやるパターンに、どこかの1つの数字を持ってきて、「こんな悪い数字がある!」「あんな悪い数字がある!」と列挙するという批判手法がある。
これは学者がよくやるね。学者は本ばかり読んで、いろんな数字を持ってくる暇が山ほどあるからね。
社会を表す数字など、世の中には無限にある。成長率、失業率、犯罪率、実質賃金、離婚率、有効求人倍率、貧困率、進学率、財政赤字、国債累積額、本社流出数、人口流出数、経済総生産……。
挙げればきりがない。
これら世の中のありとあらゆる数字を、政治がそして1人の政治家が一気に改善することなど、実現不可能な夢物語だ。
しかし時の政治家、政権を批判することに血眼になっている者は、それらの中の悪い数字だけをピックアップする。僕も知事、市長のときに、この手法でさんざん批判を受けたよ。
・橋下さんが市長を辞めた年の2015年の大阪の街頭犯罪数はワーストワンですよね。
・大阪の子供たちの学力は、全国47都道府県の中でも下位続きですよね。
・大阪の域内経済総生産は、愛知に抜かれましたよね。
もう参ったよ。
もし、あなたの勤める会社が、こんな批判をするためだけの人事評価をしていたら、あなたはそれに耐えられます?
政治を評価する際の数字の取り出し方、評価の仕方のポイントは、以下のとおりである。
1、一点の数字だけではなく、過去から現在に至る数字の「トレンド」を見なければならない。上昇傾向なのか、下降傾向なのか、横ばいなのか。
2、他と比較して、こちらはどの程度のものなのかを評価しなければならない。
基本はこの2つだ。時間的な比較と、他との比較。一点の数字を見るのではなく、グラフで見る思考が必要なのだ。
(略)