「離婚も視野」思いを綴った長文メッセージ

【リノ】最初に「不妊治療をやろう」と話し合ったときに彼も「そうだね」と言ってくれたので、夫も私と同じ方向を向いて、同じ熱量で考えてくれていると思っていたんです。だからこそ「なんでそんなにやる気ないの!?」って不満が日々溜まっていくばかりで。私も仕事が忙しいなか時間をやりくりして病院に通っていたので、「なんで私だけがこんなにつらい思いをしなくちゃいけないのか」と思ったり……結局、治療開始から1年で不満が爆発しちゃいました。

そりゃあ爆発します。なによりも孤独はつらいものです。

【リノ】そこで、思いを綴った長文メッセージを夫に送ったんです。「なんで子づくりに協力してくれないの? 大好きだけどこんなにつらいなら一緒にいたくない、離婚も視野に入れている」といった内容でした。

【ケン】不妊治療がそこまで大変で、妻がそこまで思い詰め、不満を感じながら治療を続けていたことを僕は一切わかってなかったんです。「なんか今日怒ってるな」くらいにしか感じてなかったというか……。「すぐに結果が出なくても、そのうちなんとかなるでしょ」くらいに楽観的に考えていたので、妻との“ズレ”は相当大きかったと思います」

そう、やっぱり夫婦間の問題の根源は「伝わってない」がとても大きい。でも、伝える側が努力しても、聞く側が焦りを感じず聞こうとしない限り伝わらないことも多々ある。こういう状況を「ヒステリーだ」とひと言で片付ける人もいますが、それは思考停止。そこからふたりは不妊治療から一旦フェードアウトしたそうで……。

写真提供=扶桑社

知識としてPMSを知ることで、妻を理解できるように

【リノ】不満を爆発させた後、不妊治療からフェードアウトして怒涛の遊び期に入りました。毎晩飲んでましたね。土日だったら昼から3〜4軒くらいハシゴして、毎月10万円以上は飲み代に使っていたと思います。

【ケン】僕はもとから趣味だった卓球にさらにのめりこみました。

【リノ】そんな生活を3年続けてたんです。貯金を食いつぶしながら(笑)。

そのときのおふたりの関係性はどうだったんでしょう?

【リノ】とても良好でしたよ。お互い好き放題って感じで。その時期、私は自炊もほぼしてませんでした。

【ケン】でも、僕はリノの不満爆発を受けて考え方は変わっていきました。不妊治療のためだけじゃなく夫婦として、相手のことを知ろうとしなきゃいけないし、勉強もしなきゃいけない。たとえば何も知らないと、妻がイライラしている状態にコチラもイラっとして正面からぶつかってしまう。でも「PMS(月経前症候群)でイライラすることがあるんだな」などと知識として知っておけば妻のイライラの理由がわかるし、避けることもできる。自分が理解できないばっかりに、妻とケンカになっちゃうというのは悪いなと思っています。

【リノ】彼が理解してくれるので、逆に私も言うようになりました。イライラしてたら「生理前です、ごめん!」とか。そう言うと、「そうだと思った」とわかってくれるので。

私もPMSでイライラしちゃうタイプですが、強い言葉を言っちゃった後に罪悪感でさらにイライラが増すという負のスパイラルがあります。やはり人を救うのは知識と思考だなあ。