人一倍応援してくれる人ほど人前で話しかけない

【小泉】政治家には支援してくれる人が大勢います。ただ、支援者の中には講演会などのときにも、私のそばには来ないし、話しかけてもこないのに、人一倍熱く応援してくれる人がいる。幼馴染おさななじみも同様です。言い換えると、人前で仲が良い姿を見せないのです。なぜかというと、自分が近くに行って話しかけてしまうと、他の人が声をかけにくくなってしまうから。

(写真提供=飛鳥新社)

【田村】「他の人はいまこの瞬間しか会えないけど、私はいつでも会える。だからいま話しかける必要はない」と考えるわけですね。

【小泉】そのとおりです。人から気くばりを学びますね。よく知らない人に限って「小泉は私の友達だ」というような人もいます。一度しか行ったことがない店を常連というようなものですね(笑)。

【田村】見栄を張るわけですね。そういえば一度写真を撮っただけで、「この政治家とは顔見知り」という人もいます。

【小泉】たくさんいますね。政界に限らず有名になると、親戚や友達が増えるというのは本当です。よく知らない人が私の友人を名乗っていることもあります。だからこそ、私は「本当の意味での友達」を大切にしようと心掛けています。

周りが全員敵でも支えてくれるのが“真の友”

【田村】進次郎さんはインタビューで、友達100人できるは嘘だ、100人ときちんとした付き合いができるわけがないといっています。

【小泉】はい、昔から私はそういっています。童謡「一年生になったら」は「ともだちひゃくにんできるかな」という歌詞です。しかし、友達は100人もいりませんから。もちろん、友達には様々な定義があると思います。しかし、濃い付き合いとなると、絶対に100人も付き合えない。

【田村】本当に大切にできる友達という意味では、100人は無理ですね。

【小泉】そうなのです。だから小学校で子供たちがあの歌を歌うときは、友達とは何かを考えるきっかけにしてほしい。

【田村】きちんとした付き合いとは、具体的にどんな付き合いですか?

【小泉】説明するのは難しいですね。この世界にいると敵も少なくありません。ただ真の友は、仮に周りが全員敵でも、最後まで私を支えてくれると思える友達です。

【田村】それから人付き合いは距離間も重要です。あまり親密になりすぎて、しょっちゅう一緒にいると仲が悪くなることもあります。私が仕えていたころの橋本龍太郎氏は、頭の後ろで手を組んで、宙を見つめていることがありました。おそらく人と会って疲れていたのだろうし、何か考え事をしていたのかもしれません。そんなときは何か用事があっても、なるべく話しかけないようにしました。これは私なりの気くばりでした。