ジャンプは真っ先に新しいことをやろう

しかし、もともとジャンプには「ジャンプは真っ先に新しいことをやろう」という気風があります。また、前年にデジタル版も出した「週刊少年ジャンプ」45周年記念号は、デジタルも売れたし、紙もしっかりと売れていた。その実績もあって、無事にゴーサインが出ました。

少年ジャンプ+編集長 細野修平氏

「少年ジャンプ+」のリリースは、14年です。まず反応があったのは、やはり「週刊少年ジャンプ」の定期購読でした。新しい読者もいたし、紙から移ってきた読者もいました。

そして、「少年ジャンプ+」がオリジナル作品で目指したのは、曜日ごとにスターをつくること。「週刊少年ジャンプ」は、発売日の月曜日を楽しみにしている人がすごく多いですよね。「少年ジャンプ+」は、その楽しみを読者に毎日提供しようと思いました。そのためには、曜日ごとにある程度の作品数を揃えて、ジャンプらしい健全な競争を促す必要があります。そうすると、1曜日10本×7日で、計70本くらいが理想ですが、最初はその作品数が少なくて苦労しました。

スタート時は、復刻作品を除いて20本くらいだったでしょうか。そこから現在のオリジナル作品約70本弱に持っていくときに貢献してくれたのは、「ジャンプルーキー!」という漫画投稿のデジタルサービスです。ここに新人作家さんが投稿すると、すぐ公開されて、編集者と読者が評価をします。新人作家発掘のために始めたサービスなので、才能があると感じる方がいたら積極的に声をかけて、「少年ジャンプ+」でも描いてもらっています。

新しいユーザーを増やすための仕掛けは、初期はあまりしていませんでした。宣伝施策を行い始めてからしばらくして、藤本タツキ先生「ファイアパンチ」や、原作・LINK先生、作画・宵野コタロー先生の「終末のハーレム」の連載が始まると、アクティブユーザーが一気に増えた。デジタルでも、やはり一番大切なのは、作品の力だと痛感した出来事でした。

ただし、それが行き過ぎて「作品さえ良ければいい」になるのもマズい。作品に頼り切るのではなく、編集部としてきちんとデータ分析しながらマーケティング施策も打つようにしています。たとえば19年4月のアプリ改修時に、アプリを初回ダウンロードした人は、オリジナル作品を一回限り全話無料で読めるようにしました。それまでは最初と最新の3話のみ無料でしたが、ほかは有料でした。それだと短期的な収益は得られても、読者のすそ野は広がらない。まずは漫画を多くの人に読んでもらうことが大切だと考えて、初回全話無料に切り替えたのです。