週刊少年ジャンプが初めてスマートフォンアプリに挑戦したのは、2012年の「ジャンプBOOKストア!」です。私はもともとデジタルが大好きで興味もありました。週刊少年ジャンプ編集部の前にいた、ジャンプスクエア編集部で増刊号のデジタル版を出したのですが、それは出版社ではかなり先行した取り組みでした。

「少年ジャンプ+」はユーザ数が147%増加

コミックスをアプリで売りたい

一方、ビジネスの視点でデジタル化の遅れに焦りを感じていたのが、当時デジタル事業部にいた現・少年ジャンプ+副編集長の籾山もみやま悠太です。私が週刊少年ジャンプ編集部に異動してデジタル担当になった後、籾山から「コミックスをアプリで売りたい」と話があって企画がスタートしました。

当時は、漫画アプリはおろか、Amazonの電子書籍サービス「Kindle」が上陸する前です。市場はまったく読めず、かなりチャレンジングな企画だったと思います。しかし、当時の週刊少年ジャンプ編集長の瓶子へいし吉久(現・部長)が「新しいことはどんどんやれ」と背中を押してくれて実現しました。あのタイミングで、デジタル好きな私、ビジネス視点で危機感を持っていた籾山、そして新しいものに積極的な瓶子、それぞれの思いが合致したからこそ、「ジャンプBOOKストア!」は生まれたと考えています。

いざ「ジャンプBOOKストア!」を始めると、驚くほど反応が良く、すぐ黒字化しました。デジタルにもしっかり読者がいることがわかったのです。

さらに、その層に向けて新しいエンタメを試そうと、翌13年に次のアプリ「ジャンプLIVE」をリリースしました。最初のアプリは漫画の電子書店でしたが、次は漫画に加え、小説やアニメも配信、動画配信も試しました。しかし、残念ながら「ジャンプLIVE」は利益が十分に出ませんでした。基本無料、有料部分で課金をするモデルで、それなりに売り上げは立ちましたが、いろいろ作り込んでしまい、お金をかけすぎてしまったのです。

その反省から、一番反応が良かった漫画に絞って新たに開発したのが「少年ジャンプ+」です。ビジネスの柱は3つ。まず、「週刊少年ジャンプ」デジタル版の定期購読。次に、コミックスの販売。そして、オリジナル作品の課金です。

なかでも目玉として考えていたのは「週刊少年ジャンプ」デジタル版でした。紙でしっかり利益が出ているコンテンツをデジタル版で出すことについては、いろいろな意見がありました。当時、漫画雑誌でデジタル版を出していたのは、講談社の青年誌「Dモーニング」だけ。他の少年誌はやっていないし、もう少し様子を見てもいいのではないかというわけです。