ユーロ高の後は円高が来る可能性

以上を整理していくと、少なくともこのユーロ高のトレンドは今秋の米大統領選挙までは続きそうだ。このままトランプ大統領が有効なコロナ対策をとれず、また対中摩擦に躍起となるようでは、1ユーロ1.20ドルの節目を超えるのも時間の問題だろう。さらに米国に比べて良好な経済指標の発表が欧州で相次げば、17年5月のマクロン大統領の当選後につけた1ユーロ1.25ドル台も視野に入る。

堅調なユーロ相場の背後で、ドル円相場も緩やかな円高トレンドにある。つまり主要通貨の強さは今、ユーロ、円、ドルの順となっている。とはいえ、政治的な安定を好感したユーロ買いもそう長くは続かないはずだ。投資妙味が薄らいだと判断された場合、これまでの急速な上昇の反動でユーロが急落する展開は十分に予想されるが、その際に受け皿となる通貨はやはり円だろう。

たしかに、足元の日本の貿易収支は輸出の不振を受けて赤字基調が定着しており、実需面から円に買いが入り難い状況である。先行きの世界景気も不透明感が強いため、日本の貿易収支が黒字化するには相応の時間を要する。この要因が円高を進み難くする一方で、これまでの急速なユーロ高を受けて、リスク回避の受け皿となりえる主要通貨は、消去法的に円しかない。

欧米の政治情勢の動き次第では、1ドル100円割れが定着する可能性も視野に入る。輸出企業の業績には逆風となる一方で、日本経済全体にとっては、この局面での円高は必ずしも悪いことではない。円高による物価押し下げ圧力が、雇用の悪化に伴って減少を余儀なくされる所得をカバーするためである。いずれにせよ、円は当面、強含みの展開となりそうだ。

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