それなのに、第4のタイプの社員は概して無傷のままです。上司から叱責されても、彼らは変わりません。痛い思いはしていないからです。実際、私たちの多くが、高い成果を求めるあまり部下の有害な行動に目をつむるという誤りを、長い職業人生のどこかで犯しているはずです。

それをやってはいけません。

愚か者は組織に貢献する以上に害をなすということを、企業のリーダーは確信しなくてはなりません。愚か者は大きな成果はあげますが、彼らが組織の文化や総合的な競争力に及ぼす害のほうがはるかに大きいのです。

このような考え方を受け入れれば、愚か者を排除するのはかなり簡単です。

リーダーは、社内のすべての人間に、会社が重視している価値を周知徹底させなければなりません。それらの価値を自ら実践し、他の人々が実践していたら惜しみない賞賛と報奨を与え、それらの価値についてうんざりするほどしつこく語り続けなければなりません。

組織から愚か者をなくす真の決め手は、現在いる愚か者を辞めさせることです。そして、その理由を全社員に明らかにすることです。価値を守らないからクビにしたのに、「ジョーは家族と過ごす時間を増やすために退職した」というようなつくり話でごまかすのはまったくの誤りです。

 「ジョーはグローバルに考えなかったから、辞めなければならなかった」「ジョーは『採用にあたっては男女の別や人種にとらわれない』という価値を守らなかったから、退職させられた」と、伝えなければなりません。愚か者を辞めさせるたびに、それを必ず教育の機会にしてください。そうすれば社員は、愚かな行動はきわめて高くつくということを学ぶでしょう。

とはいえ、どんな組織も愚か者を完全に取り除くことはできません。業績があまりにもすばらしいために、あるいは望ましくない行動があまりにもさりげないために、チェックをすり抜ける者が必ずいるでしょう。

しかし、腐ったリンゴを取り除く努力はやめてはなりません。彼らは企業には腐敗そのものですから。

(回答者ジャック&スージー・ウェルチ 翻訳=ディプロマット (c)2007. Jack and Suzy Welch. Distributed by New York Times Syndicate.)