●池谷先生からのアドバイス

人間は睡眠中に、浅い眠りである「レム睡眠」と、深い眠りである「ノンレム睡眠」の二種類を周期的に繰り返します。面白いのは、レム睡眠のときの脳の活動です。睡眠中は外からの情報が一時的に遮断されますが、そのあいだも記憶を司る海馬は活動を続け、情報を消化して記憶にとどめたり、情報を整理して見通しをよくしたりする処理を行います。脳にとって睡眠は、情報処理を集中して行うためのアクティブな時間なのです。

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睡眠のリズム

睡眠は記憶の定着や情報の整理だけでなく、閃きにも貢献してくれます。睡眠中の脳の活動について、ドイツのドーブ博士がこんな実験をしました。

法則に沿って並んだ数字の列の一部を解答させる穴あき問題を、3つのグループに出題します。1番目のグループは、朝11時に出題して、8時間後の夜7時に試験。2番目のグループは、夜の11時に出題したあとに寝てもらい、朝7時に試験。3番目のグループは、夜11時に出題して、そのまま徹夜してもらって朝7時に試験します。

問題の難易度は高く、閃きを必要とするレベルです。それは試験結果にも反映されており、1番目と3番目のグループは平均約20点しか取ることができませんでした。

興味深いのは、2番目のグループの結果です。このグループは寝ていただけにもかかわらず、平均約60点と好成績でした。この結果から考えられるのは、睡眠が閃きを与えてくれるということです。問題解決の糸口が見えないときは、ウンウン唸りながら考えるより、睡眠中の脳に考えさせたほうが、ずっといい結果を得られるわけです。

そう考えると習慣として何をすればよいかも浮かび上がってきます。就寝前は、脳に睡眠中の宿題を与える時間帯。眠る直前まで仕事の資料や本などに目を通して、無意識の脳に仕事をさせるための情報を入力するとよいでしょう。