預貯金の利子や株式の配当のようなインカムゲインがなく、さらに元本保証もないため金価格が下がれば元本割れする可能性もある。金で収益を上げようと思ったら、相場が安いときに買い高いときに売却するという地道な方法しかないのだ。
金の延べ棒など現物で購入する場合は保管場所を用意しなくてはならなかったり、購入や売却の際に手数料がかかったりと、何かとコストがかかることも、初心者が気軽に手を出しづらい一因となっている。
預貯金を持つくらいだったら金に替えておく
そんな金投資にももちろんメリットはある。紙幣と違い金そのものに価値があるため、世界情勢が混乱したときには価格が上昇する傾向がある。いわゆる「有事の金」である。このコロナ禍でそれが証明されたといってもいい。また、インフレが起こった際に価値が上昇するため、金を購入することで資産の目減りを防げるという利点もある。
『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)の著者で、資産運用や投資に詳しいエモリキャピタルマネジメント代表の江守哲氏は、「FXや株の経験がなくても、金投資は誰でも始めやすいと思います。極端な話、現金の代わりだと思って、『預貯金を持つくらいだったら金に替えておく』くらいの気持ちでいいかもしれないですよ」と言う。
「日本でも海外でも、投資といったらまず株から入ることが多いですよね。でも、私の感覚からすると株は値動きが大きくてリスクがあるので手を出すには勇気がいります。
私は、何か投資をするときは必ず金を買います。実は20年の6月までの騰落率でいうと、金(17%)のほうがナスダック(12%)より高いのです。20~30年前からすると、明確に金のほうがパフォーマンスが高いですが、あまり認知されていないのが実情です。
リーマンショックのときもコロナショックのときも、実は金のほうが株よりも先に上がっています。このことはデータとしてかなりはっきり出ていますが、それでも株で儲けたい人が多く、金は相対的には認知度がまだ低い“穴場”の投資先といっていいでしょう。
富裕層向けにアドバイスを行うスイスのプライベートバンクは今まで資産の5%ぐらいを金に振り分けさせていましたが、最近は10%ぐらいに引き上げようとする傾向が出てきているようです」(江守氏)
江守氏曰く、冒頭のA子さんのような例は特殊で、最近の金の高騰を見て金投資を始めた人は少なく、今うまみを感じているのは前から金投資をしている人が多いという。