ドルの価値は50年で50分の1に

さて金相場がめざましい上昇を見せているが、なぜ最近になってここまで金の価値が上がっているのか。

「理由は大きく分けて2つあります。1つはゼロ金利政策です。20年3月、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は、新型コロナウイルスによる景気悪化に対応するためにゼロ金利政策を導入しました。金保有の最大のデメリットは金利がつかないことですが、金利が低くなることでそのデメリットが薄れたわけです。実際、金の価格もゼロ金利政策導入後の20年3~4月頃から目に見えて上がってきています。

金市場の中心であるアメリカで盛り上がりが起こったことで、ヨーロッパや日本でも金を買う動きが広がってきました。金の過去最高値は、ヨーロッパの財政危機があった11年9月の1オンス約1920ドルです。アメリカはひとまず22年までゼロ金利政策を続けると発表しましたが、この政策が長引けば長引くほどこれを抜く可能性が高まります。

もう1つの理由としては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績の悪化に備え、手元資金を確保するために企業が次々と社債を発行したことが挙げられます。今まで例を見ないような規模の金額で市場に資金が供給され、たくさんのお金が市場に出てきました。

このお金は、まずは株や債券のほうに投資されているのですが、それでも余るため『金利も低いし、だったら金も買おうか』という考えをする人がたくさん現れてきました」(同)

江守氏によると、金に対するドルの価値は、この50年で50分の1になっている。市場にドルが過剰に出回っている、つまりドルの価値が下がっている今、ドルを持っていると損をするだけなので早く金に替えたほうが賢い。

「ドルの根源的な価値は、おそらくこれからも低下する」(江守氏)。
「ドルの根源的な価値は、おそらくこれからも低下する」(江守氏)。(PIXTA=写真)

「コロナ危機のときに株が下がりドルを借りていた新興国が、返済のために市場からドルを買うことで、ドルが上がることはあります。しかし、それはいわゆる目先のフローで上がっているだけなので、根幹のドルの価値とは別の話なのです。ドルの根源的な価値は、おそらくこれからも低下すると予想しています」(同)

今すぐ金を買うべきだということはわかったが、どのようにして買えばよいのか。江守氏によると、金投資の主な方法には4つあり、それぞれにメリットとデメリットがあるという。

1つ目は、金地金の購入。金の延べ棒など金の塊を購入する方法だ。購入金額は数十万~数百万円と高く、金の輝きを観賞して楽しめるという点で富裕層に人気がある。盗難や火災を防止するために安全な保管場所を確保する必要があり、そのコストがかかることに注意だ。地金商、鉱山会社、商社、銀行、百貨店などで買うことができる。