豪雨のときに役立つ「オーバーフロー管」

定期的な清掃も大切で、バルコニーの排水口にゴミや枯葉などが詰まっていたため適切に排水されず、やはり建物内部に浸水をもたらすケースも多い。またたとえ排水口が清掃されていても、想定を超える大雨が降れば、排水口の処理能力を超えてしまい、建物内部に浸水する。

そんなときに役立つのが、窓のサッシよりも低い位置に設置する「オーバーフロー管」だ。排水口で対応できないほどの雨が降っても、オーバーフロー管があればバルコニーに溜まった水を緊急放水できるため室内への浸水を防げる。

しかし、オーバーフロー管は設置義務がなく、設置されていない住宅も多い。バルコニーからの浸水被害の相談を受けた住宅のうち、大部分はオーバーフロー管がなかった。後付けで設置することも可能だが、ずさんな工事をすると、バルコニー内部の防水層を傷つける恐れがあるため、確かな技術を持ったリフォーム会社などに依頼したい。

一方、後付けバルコニーは雨水をためることはないが、外壁に穴を開けて設置するため、少しでも穴が開いていれば、壁の中に雨水が浸入する。

3.外壁のひび割れは0.5ミリでも注意せよ

外壁のクラック(ひび割れ)が生じ、そこから浸水するケースも。中古住宅を調査すると、窓の周辺の壁にクラックが入っていることがよくある。一般にクラックができたら、その都度対処する必要がある。髪の毛程度の細いクラックなら緊急性は低いが、太さ0.5ミリや深さ20ミリを超えるようなクラックが外壁に生じている場合は要注意。そこから雨水が建物内部へと入り込むリスクが高い。

長嶋修、さくら事務所『災害に強い住宅選び』(日経プレミアシリーズ)

またサッシの周りはゴム状のコーキング材などで埋めて止水・防水しているが、経年とともに必ず劣化していく。次第にひび割れなどが生じ、そこから雨漏りをすることも。

またエアコンを取り付ける際には、建物が完成してから壁に穴を開けることも。防水の知識に長けた、まともなリフォーム会社による工事なら問題はない。しかし、家電量販店などが契約している施工業者に後付けエアコンの工事をしてもらった結果、雨漏りし始める事例は後を絶たない。工事の仕方が下手だと、最悪の場合、配管穴から雨水が入り込む。

以上、一戸建ての水害についてざっと概観してきたが、一戸建てにお住まいの方は、来る台風シーズンに備えて、建物を一通り点検してはいかがだろうか。

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