日本経済を立て直す手は「消費税減税」しかない

先に紹介したように安倍氏は太田氏を高く評価している。それは森友問題で安倍氏を守ったのが端緒だが、それだけではない。安倍内閣はコロナ禍が始まって以来、2度にわたって超大型の補正予算を編成し、成立させている。

これらも今井氏ら経産省人脈が主導したのだが、財務省側のカウンターパートが主計局長の太田氏だった。太田氏は、官邸官僚にとっては「つきあいやすい」人物なのだ。これは見方を変えれば「御しやすい」と表現できるかもしれない。

2度にわたる補正予算だけでは、新型コロナで徹底的に弱りきった日本経済を立て直すのは難しい。残された手は消費税減税しかないという見方は根強い。その道を念頭に、「御しやすい」太田氏を抜擢したのではないか。今、太田氏が財務省から外出すると、財務省関係者の間では「今井氏らと消費税の相談ではないか」というささやきがもれる。

もともと安倍首相は「消費税増税」が嫌いだった

消費税率を下げるのは突飛な話ではない。コロナ禍が始まったころの今年3月、安倍氏は国会答弁で「自民党の若手有志からも、消費税について思い切った対策を採るべきだという提言もいただいている。今、経済への影響が相当ある。こうした提言も踏まえながら、十分な政策を間髪を入れずに講じていきたい」と見直しに前向きな考えを表明している。

これまで消費税減税が実行されていないため、「消費税減税は消えた」と考える人も多いだろうが、そうではない。消費税減税は、実現するまでには時間がかかり、即効性が乏しいから本格的な議論が行われなかっただけだ。1次、2次の補正予算で当面の対策を採った今、中期的な景気刺激策として消費税減税が浮上する可能性は十分ある。

仮に消費税減税を行う場合、税率はどうなるのか。現実的なのは8%だろう。消費税は昨年10月に8%から10%に上がっているが、もしこの前にコロナ禍が降りかかっていたら安倍政権は、躊躇ちゅうちょすることなく増税を見送っていたはずだ。それならば、「元に戻す」ことは比較的障害が少ない。さらに踏み込んで「5%」にするという案もある。自民党の若手有志たちは、事実上、税率を0%にする提言をしているが、これは現実味が乏しいだろう。