コロナ対策は目的を見失って、手段にこだわった悪しき典型

目的と手段を混同することでメンタルヘルスを害する人は少なくない。

日本で作られた精神療法で、国際的に再評価されている森田療法は、患者に「目的を自覚させる」ことを重視する。

たとえば、人前であがってしまって顔が赤くなることに悩む患者がいるとしよう。そういう場合、医師は「なぜ顔が赤くなってはいけないのか」を問う。すると、患者は「こんな赤い顔をしていれば嫌われてしまう」と答えるだろう。

「ということは、嫌われたくない、つまり人に好かれたいということですね?」
「でも、こんな赤い顔をしていたら誰も好きになってくれません。この顔が赤くなるのをなんとかしてください」
「そんなことはないですよ。私は長い間生きてきたけど、顔が赤くなるけど好かれている人は何人か知っています。でも、それ以上にたくさん知っているのは、顔が赤くないのに人に嫌われている人です。いくら顔が赤くなくなっても、人に好かれる努力をしなければ好かれるのは難しいと思います。顔が赤いからと言って、人を避けているようだと、余計に人に好かれない、それどころか嫌われるかもしれません。私はやぶ医者だから、あなたの顔が赤いのは治せませんが、顔が赤いなりに人に好かれる方法を考えることはできると思います」

このようなやり取りで、症状へのこだわりから脱却して、本当の目的を自覚させたうえで、それに向かう努力を促す。顔が赤いのを治すのは手段であって、目的ではない。本来の目的(この場合、人に嫌われずに好かれること)に到達する手段はいくらでもあるとわからせていくのだ。

人間というのは、相当賢い人でも、目の前の課題にとらわれてしまうと本来の目的を見失ってしまうものだ。

写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
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テレワークが終わり出社命令を出す会社もあるようだが、その中には、人間関係が得意でなくて、出社が憂鬱な人もいるだろうし、通勤で疲れてしまって、仕事の効率が落ちる人もいるだろう。

目的が仕事を片付け、業績を上げることであって、会社に行くのは単なる手段であるのなら、テレワークのほうが合っている人まで無理に出勤させる必要はないはずだ。会社の幹部もそれを考えるべきだろうし、目的を大切にするために会社にテレワークの継続を求める姿勢も大切だろう。

コロナ対策にしても、「国民の命を守るため」というのなら、4月分の超過死亡の原因をきちんと分析して、今の対策で本当にいいのかを検討する必要があるだろう。なぜなら、自粛という対策をとることで余計に人が死んでしまったのなら、これは、完全に目的を見失って、手段にこだわった悪しき典型といえるからだ。

賢い人がバカにならないために、今やっていることの目的は何かを自問して、本当の目的を見失わないようにしたいものだ。

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