日本にとって自動車は武器となり続けるのか
この両国にとっての共通の悩みは、長い間、磨き続けてきた自動車という武器が、現在の新しい戦場で一気に古びてしまったということだ。電気自動車やAIといった新分野への転換を果たさなければならないことは十分承知だが、そこには、多くの関連産業や雇用がかかっており、バッサリ切り捨てると、本体まで倒れかねない。だから、メーカーだけではなく、政治家にとってもジレンマは大きい。
特に、これまで労使がなるべく協調して、ともに繁栄を築き上げてきた歴史のある日本では、不況などによって企業の業績の悪化があるたびに、合理化や賃金カットで切り抜けてきた。だから欧米の企業よりも、リストラに対する躊躇はさらに大きい。
1990年代、例外的に大量のリストラで危機から抜け出したのは日産だったが、それを容赦なく実施したのはカルロス・ゴーンという外国人だった。「日本の経営者にはあれはできなかった」とよく言われるが、それは能力がなくてできなかったのではなく、日本人だからできなかったのだ。
では、現在、電気自動車の戦いは具体的にいったいどこまで進んでいるのだろう。
日産リーフが世界で賞賛される理由
EUはあまりにも厳しいCO2削減で自分の首を絞めつつ、肝心の電気自動車の技術では出遅れている。その点、日本は自分の国の規制は、おおむね自分たちで決められるので(COP〔国連気候変動枠組条約締約国会議〕などの縛りはあるにしても)、EUの国々に比べるとまだ恵まれている。また、電気自動車の技術でもEUよりは先行している。
日産リーフは、世界で一番たくさん走っている電気自動車の一つだ。ヨーロッパでも善戦している。普段、日本車のことは無視するか、取り上げてもたいしてよくは書かないドイツのメディアが、リーフだけは褒める。丁寧に作ってあるので使い勝手がよく、走行距離にも信用がおける。性能のわりには、お値段も手頃。
そのほか、ドイツで多く見かけるのは、ルノーのゾエだ。ヨーロッパのメーカーの中でルノーが電気自動車に突出しているのは、日産の技術が貢献しているのだろうか。
一方、テスラは高級車なので、今のところカテゴリーが少し違うが、長らく苦戦していたものの、2019年に黒字転換した。結局、ドイツ政府が躍起になって電気自動車へのシフトを図ったせいで、儲かっているのは今のところ、日本勢、フランス勢、そして、アメリカ勢である。