電気自動車をめぐって、世界中の自動車メーカーが熾烈な競争を繰り広げている。ドイツ在住の作家・川口マーン惠美氏は「ドイツは電気自動車で出遅れた。普段は日本車を無視するドイツのメディアが、『日産リーフ』だけは褒める。それは日産リーフが世界で最も売れた電気自動車の一つだからだ」という——。

※本稿は、川口マーン惠美『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

日産リーフ試乗記。2019年、香港にて
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電気自動車シフトで日独だけが抱える問題

電気自動車へのシフトにおいて、ドイツや日本のメーカーが、ガソリン車やディーゼル車の終息と電気自動車の開発という二段構えの課題を背負っているのに比べて、しがらみのない新興企業は極めて強い。そもそもシフトではなく、ゼロから始め、未来だけを考えていればいい。だからこそ、アメリカの新興企業にとっての手強いライバルは中国なのだ。エンジンの開発という歴史を踏まない中国にとって、電気自動車という土俵は希望溢れる処女地だ。彼らはすでにアメリカに激しい戦いを挑み始めている。

現在、中国のGDPに製造業が占める割合は大きく、ほぼ30%。それに続くのがドイツ、日本で20%前後。アメリカ、フランスは11〜12%程度で、イギリスにいたっては10%を切っている。しかし、アメリカの製造業がGDPに占める割合は、将来、増加するという予測だ。それはつまり、新分野での「製造業」が軌道に乗るということだろう。そうなれば、米中の争いは、さらに熾烈なものになる。

一方、日本とドイツは、高度なものづくりで繁栄してきたという歴史があり、未だにどこか、昔の栄光にこだわっているきらいがある。さらに言うなら、両国とも、今でも自動車が国内の基幹産業であり、しかも、国民がそれを誇りに思っている。そのうえ、高度なロボット技術などは突出しているが、一般社会のIT化がさほど進んでいないという、奇妙な共通点もある。そして、政府がいくら発破をかけても、なかなかキャッシュレスにならないところも、なぜか似ている。