二重の意味で状況が厳しいドイツのメーカー

中国では2019年より、電気自動車の生産割り当て制度も始まった。具体的に言うなら、2019年から、中国の乗用車の生産台数、および輸入台数の10%が電気自動車でなければいけなくなった。2020年はそれが12%に引き上げられた。課題を達成できなかった場合、翌年分で相殺してもよいが、それもできなければ、そのメーカーは、ガソリン車の中国向け輸出、あるいは現地での製造が制限されるようになると言う。

つまり、中国市場を手放したくなければ、10%、12%といった割合で、電気自動車を売らなければならないわけだ。これを聞いただけでも、各国の自動車メーカーのお尻に火が付いている様子は、容易に想像できる。特にドイツのメーカーは、中国市場に依存しているうえ、電気自動車の開発では遅れをとっているから、状況は二重の意味で厳しい。

いずれにしても、今、ドイツのメーカーが皆、浮足立つように電気自動車にシフトしているのは、地球温暖化防止のためと言うよりも、まずは中国市場に居残れるかどうかという死活問題に、猛烈な勢いで取り組まざるをえない結果と考えたほうがわかりやすい。

今や死にもの狂いのドイツの自動車メーカーの唯一の希望は、中国との相性がすこぶるいいことだろう。この二カ国の仲のよさは今に始まったことではなく、遠い昔、しんの時代から続いているのだが、それがこの15年ほどの爆発的な交易の増加でさらに密になっている。だからこそ、政府もドイツの自動車メーカーも、中国と何らかの歩み寄りができる可能性に、大きすぎる望みを託している。

中国にすり寄るドイツに未来はあるのか

ただ、中国がそれほど甘いかどうかは別問題だ。ドイツの技術が中国のそれよりも優位であったこれまでは、中国は従順であり、柔軟でもあった。しかし、この柔軟さは両刃の剣だ。いつか、中国とドイツの技術力が互角になったとき、彼らがなおも従順である保証はない。