最近は「がん」「心疾患」「肺炎」「誤嚥性肺炎」の死亡率が上昇

高度成長期以降は、医療の発達に衛生環境、栄養状態の改善が加わって、結核をはじめとする感染性疾患が大幅に減少した。その結果、これらに代わって、がん、脳血管疾患、心臓疾患などの疾患が増大してきた。1957年頃から、これらは加齢に伴うものであることから「三大成人病」と称されたが、1996年ごろからは、糖尿病、腎臓病、慢性肝疾患などを含め、生活習慣との間に深い関係があることが明らかになってきたことから新たに「生活習慣病」と称されるようになった。

近年の死因別死亡率の特徴としては、生活習慣病の中でも「脳血管疾患」の死亡率が低下する中で「がん」と「心疾患」の死亡率が傾向的に上昇している点、高齢者が「肺炎」や、「誤嚥性肺炎」(一般の肺炎とは区別される)で死ぬケースが多くなっている点などが目立っている(もっとも2017年には原死因を重視するルール変更により「肺炎」は急落)。

患者が特に増えているのは慢性腎臓病、歯周病、骨折、うつ病

次に、直接的な死因となることが少ない病気も含まれる患者数のデータを見てみよう。

図表3には、②の「患者調査」によって、入通院している患者数ベースで、どんな病気が多く、またどんな病気が特に増えているかを示した。

患者数としては「高血圧」が994万人と圧倒的に多く、これに次いで「歯周病」の398万人、「糖尿病」の329万人、「脂質異常症」の221万人が続いている。「脂質異常症」とは血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪の値が異常となる病気であり、「高脂血症」とも呼ばれる。

患者の男女構成に特徴が見られるものを調べると、「脂質異常症」は7割以上、「骨折」は6割以上が女性である女性が罹りやすい病気であり、これらとは対照的に、「慢性閉塞性肺疾患」は男性比率が7割、「慢性腎臓病」の場合は6割強となっており、これらは男性に多い病気である。

患者調査は3年ごとの調査である。2014年から最新の2017年にかけての患者数の増減率を見ると、主要な傷病の中で最も増加率が高いのは、透析患者を含む「慢性腎臓病」の32.8%であり、これに「歯周病」の20.2%、「骨折」の16.7%、「うつ病・躁うつ病」の14.3%が続いており、図表で取り上げた病気の中で1割以上増えているのはこの4つだけである。

反対に、患者数が大きく減っているのは、「ウイルス肝炎」が15.2%減、「慢性閉塞性肺疾患」が15.7%減である。「結核」も1割減である。

「歯周病」は、患者数とその増加率がともに2位と、最近、特に目立つようになった病気である。「歯周病」は、それ自体、痛みや歯抜けの原因であるとともに、歯垢とともにそこに巣食う歯周病菌が血管に入り込み、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の要因となることが分かってきた。

東京四谷の歯科医院長である山口和夫氏によれば「実は、歯周病の人が脳梗塞になるリスクは、歯周病でない人に比べて2.8倍も高いという統計もあります。こうした状況にあることから、脳外科、心臓外科の医師から、手術の前などに徹底した歯垢の除去を依頼されるようになりました」ということだ(『日経ビジネス』2018年9月10日号)。

患者数が大きく増えている病気には、生活習慣の変化や高齢者の増加によってその病気自体が増えているという側面のほかに、その病気に対する認識の深まりなどからこれまで以上に病院で看てもらうようになったから増えているという側面もあろう。