お店で買うより200円高くても構わない

さて、こうしてコストコのオンラインに依存する新しい生活スタイルを始めた経験から、2つのことに気付きました。

1点目はコストコのオンライン商品の価格が、倉庫店で買うよりも少し高く設定されていることです。

それは一律何%というわけではなく、商品によって違う。たとえば私がよく買うコーヒー豆の場合、オンラインの方が100円ぐらい高い。これはまだ価格差が小さいほうで、多くの商品は200円から300円ぐらい、倉庫店よりもオンラインの方が高いという価格設定になっています。

実はこれはコストコのビジネスモデル上、どうしても必要な価格差なのです。というのもコストコは他の小売店と違い、倉庫のパレットの上に置いてある商品を消費者がピックアップしてレジまで運んで会計します。

通販で注文があった場合に従業員がやるのもこれとまったく同じです。つまり、消費者の代わりに従業員がピックアップするための人件費、そして配送コストがかかります。コストコは、そのコストをオンライン商品の価格に反映させているわけです。

お店で買った方が200円安いのだったら、お店に行ったほうがいい。以前であればそう考えたところですが、コロナで私たちは「お店に出かけて必要なものを買いそろえることが生活の中で結構大変な作業であった」ということに気づきました。

コロナによって、お店に出かけるコストやリスクが可視化されたのです。今後、コロナのワクチンや特効薬が開発されれば消費者の考え方は変わるかもしれません。しかしそれでも、自分でお店に出かけるコストを考えると、少し高くても通販で済ませたいというニーズは減らないと私は見ています。

会員に向き合うからこそのルール変更

2点目は、最近、コストコオンラインに「5000円以上」という最低購入条件が設定されたことです。

開始当初は2000円のチョコレートひとつでも注文でき、送料も商品価格込みの無料だったのですが、最近になって「オンラインでもよりコストコらしくお買い物いただくために、最低購入金額5000円を設定しました」という新しいルールができました。

私はこのような変更はコストコらしいと思います。コストコという企業は毎年決算をしてみると年間の利益額が年会費分の収入とほぼ同額になることで知られています。つまり企業ではありながらあくまで会員制のクラブであって、必要以上の利益は求めず、余剰利益は会員に還元していくというポリシーを長年貫いているのです。

そのように会員に向き合っている企業であるからこそ、多頻度少量の注文が顧客に定着してしまうのは、お互いのためによくないと考えて、ルールを変更したのでしょう。

今回の場合も、「利便性を考えた通販サービスを適正価格で長く続けられるようにするために、一定の量を購入してください」というメッセージが伝えられたことで、会員である私も「そりゃそうだな」と思うわけです。