世界同時不況の克服には何年かかるか

「100年に一度の経済危機」という言葉が独り歩きしています。不況が深刻であることは事実にしろ、1929年の大恐慌と比べるのはやめたほうがいい。

たとえば大恐慌のときの米国のGDP成長率はマイナス13%(1932年)でした。そして最悪期には25%もの失業率を記録しています。いまのところ米国の成長率はマイナス2~3%、失業率は8.1%で、たしかに憂慮すべき水準ではありますが、当時ほどの悲惨さではないというべきでしょう。もちろん政策対応を誤ったりすれば、大恐慌の再来となるおそれはゼロではありません。

むしろ私は「100年に一度」を安易な言い訳として使っていることのほうが気になります。日本の与党政治家は「100年に一度の経済危機だから政治空白を招く解散総選挙はできない」といいますが、衆議院の選挙は12日間で終わります。現に米国は危機のさなかに大統領選挙をやっています。

アメリカ経済再生のキーマンのバーナンキFRB議長。

日本のグローバル企業はもっと賢明です。「100年に一度の危機」をエクスキューズに使い、日本を代表するいくつかの企業は、いよいよ本気で生産拠点を日本から海外へ移していくでしょう。

日本は他の先進国に比べて法人税が高いし、労働規制も多い国です。しかも規制改革を少し進めれば、「格差ができた」と大騒ぎをする。はたしてそんな国で生産活動を続けることができるのか。グローバル企業の経営者たちは、真剣にそう考えているはずです。

企業が生き残るためには合理的な選択だといえますが、産業の空洞化につながりますから、日本国民にとってはいちばん困るシナリオです。それはなんとしても食い止めなければならない。

では、経済危機はいつまで続くのでしょうか。実は私も、はっきりした答えを持ち合わせているわけではありませんが、解答への一つのアプローチとして、次のような考え方をすることはできます。

ある専門家によると、世界中でこの20年間に40回の金融危機が起きています。そこから回復までに何年かかったかの平均は3.5年。日本のバブル崩壊を例にとると、問題の先送りを経て99年に大手銀行への公的資金注入を行いましたが、それから4年後の2003年中ごろから株価が上昇しています。

07年夏ごろにサブプライム問題が深刻化したことを今回の危機の起点と考えれば、回復は「11年の初めごろ」という答えを導き出すことができます。(文中敬称略)

(面澤淳市=構成 尾崎三朗=撮影 AP Image=写真)