できる弁護士は「書面」でわかる

前出の北村弁護士は、資質の差も大きいと指摘する。

「平たくいえばトンチンカンな理解をする人がいるんです。新人弁護士がつくった書面をたくさん読めばわかりますが、具体的事実を指摘して論理的にそれを説明する能力というのは、人によってかなり差がありますよ」

したがって、書面の出来・不出来は弁護士の実力を測るモノサシになる。企業法務に強い村田恭介弁護士は、「最初に受け取る内容証明郵便の書面を見れば、相手が手ごわいかどうかすぐわかります」と断言する。

シャープな論理構成で、きちんとポイントを押さえた書き方がしてあれば「手ごわい相手」。逆にポイントがぼやけていれば、大した相手ではない。

一方、欠陥住宅訴訟などを手がける谷合周三弁護士は、訴状や答弁書といった裁判所に提出する書状で弁護士の実力が測れるという。

「とくに民事事件で重要なのは、裁判官をいかに納得させるかということです。難しい事件だと事実関係だけでもたくさんの要素が絡みますが、これを簡潔に手際よく伝えることができれば裁判は有利に運びます。証拠をもとに依頼者の主張を書面で論理的に展開することのできる弁護士は優秀です」

ところが、そういった努力を放棄しているとしか思えない弁護士もいるという。市民派のC弁護士が憤る。

「裁判の過程で、依頼者本人が書いた陳述書をほとんどノーチェックで提出する弁護士がいます。的確な証拠をもとに本人の主張を理論的に構築するのが弁護士の務めなのに、それをまったく果たしていないのです。そういう人は論外ですね」