第一線の弁護士は法廷や和解への交渉の際、どんな相手を「手ごわい」と感じるのか。優れた弁護士の条件と探し方について、辣腕50人にズバリ聞いてみた。

優劣を決めるのは手間ひまのかけ方

「一生懸命やる弁護士と怠け者では、天と地ほどの差がありますよ!」

北村晴男弁護士が憤慨する。テレビ出演でも知られる北村氏は、県立長野高校野球部で真剣に甲子園出場を夢見た熱血漢。それだけに、一部同業者のだらしない仕事ぶりには喝を入れたい思いがあるようだ。

今回の法律特集では編集部メンバーが全国へ散り、総勢約50人の辣腕弁護士に話を聞いた。その際、依頼者にとって「頼りになる弁護士」の条件を一言ずつ語っていただいたのだ。意外だったのは、具体的なスキルや資質よりも先に「根気強さ」や「地道な努力」といった、職業人としての姿勢や倫理観を挙げる人が多かったことだ。

では、「怠け者」に頼んでしまうと、依頼者はどんな目に遭わされるのか。都内で活躍する中堅のA弁護士が呆れていう。

「ある弁護士は未払い残業代の請求訴訟で、本来なら付加金が付いて倍額を請求できるのに、そのことを知らずに残業代しか請求しなかった。不勉強のため依頼人に損害をもたらす、典型的なダメ弁護士です」

都心に事務所を構えるキャリア19年のB弁護士も次のように証言する。「弁護士によっては、土地の登記簿謄本さえ確認しないまま事件処理を進める人がいるんです。中堅以上の弁護士なら年間500人しか合格しない旧司法試験をくぐりぬけているわけですから、能力的には大差がないはずです。むしろ弁護士としての優劣を決めるのは、きちんと必要な手間ひまをかけるかどうかだと思います」

自らを“職人肌”と呼ぶB弁護士はもちろん手間ひまをかけるタイプ。

「私の場合、相手方の弁護士がどういう人なのかを見極めるために、ひとつの案件を引き受けたら、挨拶がてら必ず先方の事務所を訪問するようにしています。すると事務所の雰囲気や、その人の所内でのポジションもわかります。もちろん不動産が絡むときは登記簿謄本を確認しますし、いちいち現地に出向きます。一般論でいって、そういう“下ごしらえ”をしている真面目な弁護士は手ごわいですよ」