定年OBが手間ひまをかけて若手を育成
2007年からは入社2~3年目および中途入社の社員を対象にキャリア面談を実施している。担当するキャリアアドバイザーは同社の人事部およびグループ企業の社長を経験した定年OBの2人だ。2人で全国の工場・支店を巡回し、まず上司に育成方針と課題についてヒアリングしたうえで個別に面談する。そこでは「職場では言えないような話をはじめ、OB自身の失敗談や克服してきた体験談などをまじえて相談に乗る。息子よりも若い世代ですが、OB側にも育てたいという意欲が強い」という。
決して外部のアドバイザーではない。OBによる手づくりのフォローは一体感の醸成にも貢献している。
同社の会社と社員の関係を宣言しているのがグループ人事基本方針だ。(1)挑戦・革新社員に対し、成長と能力発揮の場を提供する(2)能力を十分に発揮し、やり抜き、成果を挙げた社員に厚く報いる(3)社員の成長を推進し、グループ全体の競争力を向上させる――という3つに加えて(4)雇用確保に努める、と宣言する。
前掲のGPTWの調査では社員の生の声に「解雇による人員削減をしない」とあったが、社員を大切にするというメッセージを込めている。
さらに人事方針のキーワードとして「新・成・気・結束」を掲げる。新=新しいこと・やり方にチャレンジし続けることを支援、成=自立した個人に成長することを支援、気=志と強い気概・信念を持ち計画をやり抜いていくことを支援――を約束する。そして結束は「チームワーク。自分だけよければいいというのではなく、当社の強みである周囲を巻き込んで力を発揮することを重視」(丸山人事部長)したものだ。
たとえば新しいことにチャレンジすれば当然失敗もする。失敗すれば自己責任で減点、というのが世の風潮だがそうはしない。
「失敗しなければ本当の力はつきません。10個挑戦すれば7つや8つは失敗するものです。いちいち減点していたら成長しないし、評価を下げることもしない。失敗を恐れずに伸び伸びと成長してほしいという考えです」(丸山人事部長)