変動率の高さ=利益率の高さ

株式投資が最も利益が上がる理由をシーゲル教授は別の角度から解説してくれた。

“An asset with a smaller beta has a lower return.”(ベータの小さな資産は、リターンも小さい)。

ベータとは簡単に言えば、変動率だと思ってほしい。変動率が大きな資産を人々は避ける。リスクを取りたくないからだ。

一方で変動率が低い資産については、人々は安心して投資をする。例えば債券だ。ここから何が言えるのか。債券を例にとれば、人々は債券に対して安心して投資をしているので、債券の価格は常に高めになっているということ。債券の価格が常に高めということは、常に利益は出にくいということだ。

一方で株の場合は、人々が安心して投資をする対象ではない。よく「株式投資は余裕資金でやりましょう」と言われると思う。株は短期的に見れば、価格が上がることも下がることもあり、リスクが高いからだ。そうなると、皆さんからは「その変動率が怖いから株式への投資は控えたい」という声があるかもしれない。

しかし、ここでシーゲル教授の長期リターンの研究結果を見てほしい。短期的には変動率が高いことはリスクだが、長期的には変動率が高いことが利益となる。ゆえにご高齢の方などあまり長期投資を考えられないという人は確かに株式投資の配分は減らすことに合理性はある。だが、あなたがまだ現役世代なら、株式投資を考えない手はないだろう。

いま、米国株は買いなのか?

さてここで皆さんは「米国株には投資をしたいけども、米国株が割高な時は避けて、割安な時に投資をしたい」と考えるかもしれない。

株が割高か割安を示す指標としては、「PER」が有名だ。PERとは企業が生み出す利益に対して株価が何倍になっているのかということを表す。PER20ということは企業が生み出す利益の20倍の株価になっているということだ。

ここ10年の米国株はPERが平均的に20倍前後となっており、割高感があると一般に言われていた。それは過去150年の米国株PERの平均は15倍だったので、今が割高のように思えてしまうのだ。この記事を書いている2020年5月時点でもS&P500のPERは約20倍となっている。では今、米国株投資はしない方がいいのだろうか?

これに対してシーゲル教授は明快な答えをくれた。

“I believe that the normal price-earnings ratio is higher-18 to 20.”(今後の標準PERはより高く、18~20倍でしょう)

これはどういうことか。つまりPER15倍だった時の時代は、ETFやインデックス投資というものは存在せず、取引コストが年間1~1.5%掛かっていたり、そもそも取引の流動性が少なかった。今は、手数料は0.1%であったり、ETFのおかげで流動性も高い。これを考慮するとPERは18~20というのが新しい標準的なPERの数字となるだろう、ということである。ゆえに現時点で20倍だとしても、それはあまり気にする必要はないのだ。とくに今はコロナの影響で企業の利益が一時的に下がっているので一時的にPERがあがりやすい。来年の後半ぐらいには正常化したPERを見ることが出来ると思う。