4人の死に共通するのは「肺炎の急激な増悪」
女優の岡江久美子さん(63)の死にも驚かされた。岡江さんは4月3日に発熱した。自宅で療養していたが、6日に容体が急変して都内の大学病院に入院した。集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着して治療を続けていたが、23日に肺炎で亡くなった。
外交評論家の岡本行夫さん(74)も新型コロナウイルスに感染し、4月24日に肺炎で亡くなった。感染したのが4月下旬で、入院してすぐに容体が急変したという。岡本さんは、外務省北米1課長などを歴任後、外務省を退官し、橋本内閣で沖縄問題担当の首相補佐官を務めた。小泉内閣でも首相補佐官として活躍した。
勝武士さん、志村けんさん、岡江久美子さん、岡本行夫さんの死に共通するのは、容体の急変だ。新型コロナウイルスによる「肺炎の急激な増悪」である。
医師も患者も進行に気付かない「サイレント肺炎」
最近分かってきた新型コロナウイルス感染症の大きな特徴に「サイレント・ニューモニア(沈黙の肺炎)」と呼ばれる症状がある。これは患者に息苦しさなどの自覚症状がないにもかかわらず、胸部CTの画像診断で肺炎が見つかる症例である。画像診断を受けなければ、医師も患者も肺炎の進行に気付かず、気づいたときは手遅れになる。このためいきなり重症化したように見える。
亡くなった4人との関連はわからないが、新型コロナウイルスによる死者を減らすためには、できるだけ早期に肺の状況を把握し、必要な治療を行う必要がある。
大型クルーズ船の200人以上の乗客や乗組員らの治療を行った自衛隊中央病院(東京都世田谷区)では、軽症や無症状の患者・感染者に対してCTをかけたところ、半数に肺の異常が認められた。しかも3分の1は症状が悪化した。サイレント肺炎である。
大阪はびきの医療センター(大阪府羽曳野市)でも大型クルーズ船の乗客らを受け入れたが、CT検査で無症状の患者・感染者からも肺炎特有の影が見つかり、担当医を驚かせた。神奈川県や千葉県などの病院でも、発熱やせきもなく、元気に歩き回っていた患者のCT画像から肺炎の陰影が見つかっている。中国の研究チームからも同様の論文が報告されている。