私といたら、またこの子が大変なことになる

アドデュダイを苦しめていたのはマラリアだった。7人の亡くなった兄姉たちもマラリアだった可能性は高いだろう。

「私といたら、またこの子が大変なことになる。これ以上子どもを失う痛みには耐えられない」。そう涙ぐみながら、取材にきた私に、養子として息子を差し出してきた。そのカディアツの姿に、胸が張り裂けそうになった。「あなたのせいじゃない。これからはきちんと病院にくれば助かるから」。あの日から2年、彼らは今も元気に生活している。

マラリアは早い段階で治療をすれば治る病気だが、医療機関が十分でない地域ではマラリアはいまだ悪魔のように恐ろしい病気とされている。2020年4月20日時点で新型コロナの死者数が世界で16万5000人を超えた一方、年間40万人以上がマラリアで命を落とす。

シエラレオネでも20年4月初旬に2件目のコロナ患者が確認され3日間のロックダウンをした。たった2人なのにロックダウンをするというのは日本からしたら驚きかもしれない。しかし発見された2件はあくまで病院で検査を受けることができた2人なのだ。医療環境の整った先進国でこのウイルスの波を食い止めなければ、その波は大きくなり医療環境の整っていない発展途上国を襲ってしまうだろう。マラリアから回復したアドデュダイとカディアツにこの波がどうかたどり着かないように。私たちは今何ができるのか。

(撮影=伊藤詩織)
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