「自分は善悪の判定者」であると思いこむ人がコロハラ繰り返す
「真実や善悪の判定者であるかのようにふるまう」というのは、前出の上司や社長もそうである。除菌スプレーを吹き付ける行動はまさに自分を絶対化する「自己愛的な変質者」そのものではないか。
この人たちは、平時はちょっとわがままで独善的なところはあるが、頼りがいのあるリーダーと思われているかもしれない。ところが、今回のコロナ感染のような非常時になると、身の危険を感じて「自己愛的な変質者」に豹変し、弱い立場の人間を傷つけようとする。
では、この人たちをどうやって見分けるのか。精神疾患の国際分類マニュアルでは「自己愛的な人格」を持つ人の特徴を挙げている。
②自分が特別な存在だと思っている
③いつも他人の賞賛を必要としている
④すべてが自分のおかげだと思っている
⑤人間関係のなかで相手を利用することしか考えていない
⑥他人に共感することができない
⑦他人を羨望することが多い
読者の周囲や上司に思い当たる人がいるのではないか。この人たちは言うまでもなくパワハラ予備軍でもある。
今年6月1日に施行される「パワハラ防止法」でコロハラも法律に抵触
折しもこれまで法的に何らの罰則もなかったパワハラを規制する「パワハラ防止法」が今年6月1日に施行される。コロナ関連で職場内の社員を村八分にするような行為はこの法律に抵触する可能性が高いだろう。
法律ではパワハラを、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
③就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)
と定義し、この3つの要素をすべて満たせばパワハラとなる。
優越的関係とは、上司と部下の関係だけではなく、同僚や部下からの集団による行為も入り、それに抵抗または拒絶することが困難なケースも該当する。
新法では事業主にパワハラ防止措置を義務づけるとともに、行政は履行確保を図るために会社に事実確認など書類の提出を求めることができる。
報告しない、あるいは虚偽の報告をすれば20万円以下の罰金が科せられ、措置義務が不十分であれば、助言、指導、勧告という行政指導を行う。勧告してもなお従わない場合は「企業名公表」となる。
また、個人としては都道府県労働局長による調停(行政ADR)を申請できる。紛争調停委員会が関係当事者の出頭を求め、その意見を聞く。委員会が必要と認めれば、使用者側の代表やパワハラを行った加害者だけではなく、職場の同僚なども参考人として出頭を求められる。そのうえで調停案を作成し、関係当事者に対し、受諾を勧告することになる。
今後、新型コロナウイルスをめぐり、これまで健全なホワイト企業と見られた会社にパワハラ・モラハラ上司や経営者が出現し、ブラック企業化するところも増えてくるだろう。コロナが「本性」をあぶり出すのだ。
すべての働く人は上記の知識をしっかり頭に入れ、いざという時は法的措置を利用して自分の身を守ることが大切である。