事前の対策こそが最大の防御になる
こういったカスハラ被害については、事前の防止策も用意しておくべきだ。カスハラ被害については事前の対策こそ最大の防御にもなる。防止策のひとつとして考えていただきたいのが、カスハラ被害の情報開示である。
④ カスハラ被害の情報開示し、協力を呼び掛ける
「新型コロナウイルスで大変な状況のなかで従業員がカスハラ被害に遭っている。みなさんも支援してほしい」ということをあえて明らかにするということだ。もちろん関係者の個人が特定されるような表現はしてはならない。あくまで被害の概要をあげることで十分である。
こういった開示は、なによりカスハラ被害の抑止力になる。しかも一般のお客様から見れば「従業員も大変だ」という共感をうみだすこともできる。なかなか周囲からはカスハラの実態というのは伝わらないものだ。お客様からの共感というのは、従業員にとって大きな支えにもなる。
現場の人々を守るのは、もはやひとつの企業だけでの問題ではない。この受難の時期を超えていくためにも協力して現場の人々を支えていこう。
クレーム対応は従業員を守り、店を守り、地域住民の生活を守る
クレーム対応に耐えきれず退職を申し出る従業員が続出すれば、店の運営が立ち行かない。このご時世に新たに店舗に立ってくれる人を確保することは容易なことではない。
従業員が安心することができるからこそ、お客様にもしかるべき安心・安全なサービスを提供することができる。従業員を守ることは、間接的にお客様を守ることにもつながる。経営者や店の責任者はそのことを自覚してほしい。
現在のスーパーの労働環境は、過酷のひとことに尽きる。外出自粛の要請により自宅で食事をとる機会が増えた。そうなると普段よりもスーパーでの買い物の機会が増えてくる。従業員の方は、増加したお客に対応するため十分な休憩もとれずに働き詰めという話も耳にする。
しかも「感染防止のために家族での入店はご遠慮を」と掲示しても「スーパーくらい大丈夫だろう」と安易に考えて家族総出でカートを押している姿を見ることもある。人は、どこかで「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信を持つことがある。
普段はソーシャルディスタンスと言いつつも「スーパーはいつもの買い物と同じ」ということはないだろうか。そういった心の緩みが従業員の方を感染のリスクと隣り合わせにさせていることを自覚しないといけない。