チケットビジネスのあり方を変革した橋本の歩みを、ロフトの現取締相談役の安森健(やすもりたけし)はこう評する。
「エンタテインメントプラスこそ、本当の意味でスピンアウト(旧会社と資本関係がなくなること)した企業。だって、一時は親につまはじきにされていたんだから。橋本さんは、おのれの腕1本であそこまで育て上げた。もうね、感動しますよ」
安森も、大量の不良在庫を前に途方に暮れ、苦労に苦労を重ねてロフトの商売を軌道に乗せてきた男だ。その安森にここまで言わしめる橋本の歩み。それは、ライブビジネスを産業化したいという情熱に支えられた茨(いばら)の道のりであった。
店舗でチケットを売る限り赤字から抜け出せない
なぜエンタテインメントプラスが成功したのかを知るには、どうしてチケットセゾンがいつまでも赤字体質から抜け出せなかったのかを知らねばならない。
一般的に、プロモーター(興行主)からチケットセゾンのようなチケット販売業者に支払われる手数料は8%。ここからプレイガイドに販売手数料4%を払うと、チケット販売業者の手元には4%しか残らない。システム投資に充て人件費を払うと利益はせいぜい2~3%。1万円のチケットを1枚売って、手元に残るのは300円足らず。典型的な薄利多売の商売だ。
売れるチケット(人気の高いチケット)を仕入れようとすると収益はさらに厳しくなる。競合が激しい業界なので、手数料を下げざるを得ないのだ。かといって店に支払う販売手数料は削れない。
この悪循環で、チケットセゾンの赤字額が膨らんでいった。