「先生、画面が見えませーん」の声はうれしそう

生徒側の反応をみると、NHKの教育番組やYouTubeの講義動画などと違い、見知った学校の先生が画面に登場することに喜びを感じてくれたようです。クラスメイトと一緒に受けられる楽しさもあり、意欲的に参加してくれました。

印象的だったのが、授業の最初に配信状態を確認するために「ちゃんと画面見えてる? 見えない子は今だけ、声を出してみて」と聞いたら、「先生、画面が見えませーん」という、やけにうれしそうな返事が返ってきたことです。その声の響きに私もなんだかうれしくなってしまいました。

生徒は、新学期が始まっても新しいクラスメイトや教師に会えず、電話やメールで学校とやりとりを行う程度でした。そんな中で一カ月分の課題を出され、自律的に学ぶことを求められても、難しいことは分かります。オンライン授業で学校の先生、友だちと定期的に学ぶ時間を共有できることは、学習へのモチベーションを高め、つながりを実感できるという、大きな意義があるように思います。

どれだけ真面目に取り組んでいるのか把握できない

始めてから見えてきた課題も数多くあります。

例えば、生徒―教師の双方向的な学びを行うことが、思った以上に困難なことです。少人数ならまだしも、通常の倍以上の生徒を一度に教えるとなると、生徒たちとの双方向のやり取りは難しいのが現状です。何人もが同時に話し始めると収拾がつきませんし、生徒全員が画像を出すと授業が見づらくなってしまいます。今後は、チャット機能をうまく活用して主体的な参加を促したり、できるだけ人数を減らして双方向の学びができるようにしていくなどの改善も必要でしょう。

また、ほとんどの生徒が参加してくれているように思いますが、全員というのは難しいです。結局のところ参加を強制することはできず、参加したいと思っても受け手側の回線の不具合によってログインできなかったということもありえます。さらに言うと、ログインはしていても、どれだけ真面目に取り組んでいるのか、教師側から把握できないのが現状です。

「情報担当」という一部の教員に負担が集中し、しばしば深夜まで対応に追われる状態になってしまうことも、早急に改善が必要です。そもそも教員は教科指導の専門家であって、高度なICTスキルを求められても限界があるのです。

こうしたさまざまな実情を勘案すると、私達教師も、生徒や保護者も、「オンライン授業を始めれば全て解決する」というような、過度な期待は禁物でしょう。現時点でできるのは「自宅学習課題の補完」程度のものであり、緊急事態の中で「ベストではないがベターな選択肢」として、捉えておくのが妥当だと思います。