オンライン授業の実施に踏み切ったことは英断だった

新学期が始まってすぐの4月10日、文科省は休校中の学習指導に関する通知を出しており、その中で、各家庭のスマートフォンやパソコン、タブレットの端末を学習に活用することを提案しています。この通知の影響があったものと想像していますが、その直後に岐阜県は県下の公立高校の生徒に、家庭のICT環境についてメールでアンケートを行いました。

その結果、生徒の95~98%がオンライン授業を受講できる環境が整っていることが分かりました。これを受け、県は全高校でオンライン授業を実施することを決め、数日後には導入のための準備が各学校で始まりました。準備が整った学校から、4月20日以降に配信を開始するというスピードで、文科省の通知から10日、生徒の受講環境が確認できてからほぼ一週間で授業を開始したことになります。平時から考えると極めてスピーディーな動きです。

上述の通り、このオンライン授業は正規の授業時数にはカウントできず、配信したことだけをもって授業の代替とすることはできません。こうした制度上の難しさがあるにもかかわらず、岐阜県が学習支援という位置づけで、早急にオンライン授業の実施に踏み切ったことは、英断だったと思います。

現在、受講環境の整っていない生徒には、DVDで映像を届けるといった対応を行うことになっていますが、県議員がブログで公開した県の計画によると、Wi-Fi環境のない生徒へのルーター機能付きタブレットの貸し出しも検討されているようです。これが、小中学校にまで広げられるかどうか、そのために家庭のICT環境への支援をどの程度早期に進められるかなどが課題でしょう。

初日は回線がパンクした学校も多かった

すでに各学校のホームページで取り組みが公開されていますが、オンライン授業は県のビデオ会議システムを使い、通常の50分授業とは異なり、1コマ20~50分間の授業を配信しています。当面の運用としては、クラス単位ではなく、学年全生徒が同じ授業を受けることになっています。英数国理社の5教科に加え、音楽や体育、家庭科などの教科も対象です。授業内容は各教員に委ねられていますが、私の場合、すでに配布してある自宅学習課題を補足説明していくような形で進めています。課題は復習だけではなく、4月以降に学ぶはずだった内容についても出しているからです。

これまでは、設備の問題があり、学校全体の授業数は1日10コマ程度に限られていました。しかし環境は日々改善されていて、今後は授業数をもっと増やしていくことになっています。

実際にはじめてみると、初日は回線がパンクした学校も多かったようです。配信中に「ログインできない」「視聴がうまくいかない」という電話が頻繁にかかってくるなど、トラブルも続出。専門スタッフがいない中、どの学校も模索しながらやっている状況なので、問い合わせにもなかなか適切に対応できません。

とはいえ、2日目以降は回線も安定し始めました。生徒側も、初回はログインや設定でつまずくことが多かったのですが、徐々に慣れて、すぐに接続できるようになりました。なんとなく苦手意識を持っていた教員も、久しぶりに授業ができたことの喜びのほうが大きく、一度の経験で心理的なハードルはグッと下がったようです。