今のままでは民間企業の負荷があまりに重すぎる
本来、政府が実施するべきことは、民間企業が営業活動を再開・継続していくためのガイドラインを示し、可能な限り平時の環境に近い状況を維持することだ。現在の環境下で個々の民間企業が世間の批判にさらされることを覚悟し、その営業活動を再開・継続する負荷はあまりにも大きすぎる。したがって、政府が身体を張ってその責任を引き受けることは当たり前のことだと言えるだろう。
安倍政権はいつ終わるとも知れない戦いに国民を巻き込んでいる。仮に緊急事態宣言が成功裏に解除されたとしても、「はい、今から通常通りの営業活動に戻ってください」と言ったところで、失われた産業や雇用が簡単に元通りになるはずがない。
米国ではすでにトランプ政権がロックダウンを継続する州知事に対し、ロックダウンの解除を要請し、社会機能を復帰させるための経済人の会議を招集し、その復帰プロセスについてのガイドラインを示している。政府としての能力だけでなく、その意思決定の責任を取るという覚悟の差は著しい。
安倍晋三が日本経済のためにやるべきこと
したがって、筆者はすでに安倍政権の新型コロナウイルス問題に対する経済対策について、危機意識、能力、覚悟の全ての面で期待することを半ば諦めている。しかし、安倍政権には日本経済のためにやるべきことがまだ1つだけ残っている。
それは同政権が5%から10%まで2回の増税を通じて引き上げてきた消費税率を元通りに戻すことだ。この際、百歩譲って新型コロナウイルスは予期することができなかったアクシデントで対応ができなかったとしても良い。ただし、消費税増税によって昨年10~12月期に記録したマイナス7%超のGDPマイナスは、安倍政権自体の経済運営の失政そのものだ。新型コロナウイルス問題で曖昧になっている感もあるが、消費税増税が日本経済に与えた影響は大きく、確実にその回復に向けた動きの足枷となるだろう。
安倍政権の新型コロナウイルスに関する経済対策への期待は既になくなった。ただし、最低限のこととして、消費税減税を実現することで自らの政権が日本経済に与えたダメージの尻ぬぐいをしてから政権を退陣するべきだろう。
※編集部註:初出時、「消費税増税によって昨年10~12月期に記録したマイナス7%超のGDPマイナス(前年比)」としていましたが、前年比ではないため、「(前年比)」を削除し、訂正します。(4月28日14時22分追記)