産経社説はメリハリの利いたブレない論調が売り物なのに…
「日本の感染者・死亡者の数は現在、中国や欧米諸国ほどではないが、ここへきて増加の速度が増している。宣言によって患者の爆発的急増(オーバーシュート)や医療崩壊を防ぎ、事態を収束へ向かわせようという政府の判断は妥当である」
こう安倍政権を擁護するのは、4月8日付の産経新聞の1本社説である。
産経社説は「政府や都道府県は密接に連携し、国民の生命と健康を守るために思い切った対応をとってほしい。国民への丁寧な説明と不断の情報発信も欠かせない」とも主張する。
安倍首相は小池都知事に押し切られる形で緊急事態宣言を出した。とても連携がうまく行っているとは思えない。安倍首相に問題があるのか、それとも小池都知事が強引なのか。メリハリの利いた分かりやすく、ブレない論調が売り物の産経社説には、そこまで踏み込んで指摘し、そして主張してほしかった。
接触機会を減らしている間に特効薬やワクチンを開発できるか
産経社説はこうも書く。
「首相は政府の対策本部の会合で今が国家的危機にあると語った。その上で、人と人との接触機会を7~8割減らした場合、『2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる』と指摘した」
しかし、この安倍首相の要請には疑問がある。実際、人との接触機会を減らせば、感染の拡大は抑え込むことはできる。ウイルスが人の体内に存在するからだ。だが、人との接触機会を減らすことを止めると、再び感染は増大する。問題はそれまでに特効薬や適切なワクチンを開発できるかどうかなのだ。
また気温が上昇すると、既存のコロナウイルスの大半は不活化していく。新型コロナウイルスにもそうなってほしいが、気温が下る秋口には第2波、第3波が急襲する可能性もある。
いずれにせよ、新型コロナウイルスのような未知の新興感染症には分からないところが多い。産経社説にはそこまで見極めた指摘や主張を書いてほしかった。