入口にはアルコール消毒、スタッフはマスク着用…

しかし、それから3日たっても私の携帯電話は鳴らなかった。取材を断られた理由はおそらく2つある。ひとつは、取材されるのを嫌がった。もうひとつは、私の名前を検索して、「こいつは怪しい奴だ」と思われて警戒されたか――。

気持ちが少しへこんでしまったが、ここまで来たら実際にコワーキングスペースに乗り込んで、現地を取材してくるしか方法はなさそうである。

取材許可の連絡がこなかったコワーキングスペースに行ってみることにした。

入口にはアルコール消毒のポンプ容器が置かれており、壁に貼ってある注意書きにはスタッフがマスクを着用していることや、入店人数によっては入場制限をかける旨が書かれていた。思いのほかしっかりしている対応である。

早速、いつものように仕事を始めることにした。しかし、周囲に知らない人に座られてしまうと、やはり警戒心が出てきてしまう。静かに集中して仕事ができる環境としては抜群に素晴らしいところではあるが、神経質な人だと、集中力よりも警戒心のほうが上回ってしまうかもしれない。

今までに入場規制をかけたことはない

ふと周りを見渡すと半分ぐらいの人で席が埋まっていた。ガラス越しに見える複数の会議室は満室となっており、風通しが良い環境とは言えなかった。次第にコワーキングスペースも混み合い出したので1時間ほどで出ることにした。会計時に「どのくらい席が埋まったら入場規制をかけるんですか?」とスタッフに聞いてみた。

「今まで一度も入場規制をかけたことがないので分かりません」

あっさりとした回答だった。アルバイトっぽい若い男性だったので、もしかしたら、よく事情が分からないのかもしれない。ただ、現場スタッフの判断では、どのくらいが「密閉」「密集」「密接」になるのか判断するのは難しいとも思った。売り上げにも影響するし、規制がかかったと分かれば、今、利用している人たちも危険を察知して出て行ってしまうかもしれない。入場規制の判断は経営者でも難しいと思った。