Aは服役中の様子も語ってくれた。刑務所や懲役作業をする工場では、自分と同様に覚醒剤を理由に服役している人が少なくなかったそうだ。そのため、「シャブで6回、7回、刑務所に入っている人もいたし、(注射器で)打つのと、火であぶるのとは全然違うっていう話を聞いていたんだけど、出所してから覚醒剤そのものに興味がなくなったんだよね。ブロンも買わなくなったし」と、話す。

その理由を問うと、ちょっと恥ずかしげに「薬よりも女の子が恋しくなったから」と言った。

中学に入ってから生活が荒れ始めたB

次は、“覚醒剤への依存をやめられない人”の話をしよう。名前はBとする。Bはある事件を起こして逮捕された後、覚醒剤の陽性反応が出て覚醒剤取締法違反(使用)容疑で再逮捕された。ちなみに同法違反での逮捕はこれで2度目だ。また、再逮捕後にあった家宅捜索でも0.7グラムを所持していたと地元紙で報道されている。

Bは、地元の人間として筆者も昔から知る人物だ。Bの家庭環境は複雑で、母親は水商売、父親は暴力団関係者。両親は離婚し、母親のもとで育てられた。本人によると中学に入ってから生活が荒れ始め、危険ドラッグの使用はAと同じくブロンとシンナーからスタートしたという。

Bとは10年以上疎遠だったが、筆者は今回、取材のためBのいる那覇拘置所(沖縄県)を訪れた。以下はBとのやりとりである。

「子どものことなんて頭から消えてしまう」

——初めて覚醒剤に触れたのはいつか

「19歳くらいのときだったはず。でも、あの頃は、まだシンナーを吸っていたからシンナーのほうが自分に合っていた」

——ハマりだしたきっかけは?

「多分、23歳くらいかな。大阪に働きに行っていたんだけど、仕事先の先輩が覚醒剤をやっていて、自分も一緒にハマっていった」

——逮捕された今、また覚醒剤を使いたいと思うか

「無ければやらないけど、手元にあればやってしまう。我慢しようとしても体が震えるんだよ。(自分の)子どものことなんて頭から消えてしまう」

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Bには小学生の一人息子がいる。一度目の逮捕時は面会に来てくれたそうだ。息子から「『パパ、バカじゃないの?』って言われた」とうれしそうに振り返っていた。その口ぶりからは覚醒剤をやめようという気持ちはうかがえない。