選手村活用とコロナ対策の一石二鳥も、物件購入者は迷惑顔

東京五輪の選手村は、東京都中央区の湾岸エリア晴海地区に建設中である。銀座と豊洲の間に位置しており、五輪終了後には総数4000戸超のタワーマンション群「ハルミフラッグ」としてリノベーションされる予定である。

2019年8月には第一期分譲が行われ、5000万円~2億円超という価格帯にもかかわらず、平均競争倍率2.57倍、最高71倍の人気ぶりだった。「五輪後のリノベーション工事が完了した2023年3月に入居開始」というのが当初の計画だった。

小池都知事は先の番組内でこう言って大会組織委員会に協力を求めた。

「『あれだけのモノがあるのに、どうして使わないのだ』という(国民の)声も聞いている。大会組織委員会の協力も得られればと思う」

番組が物件の購入者にインタビューしたところ「マンションの形をしている建物を病院のように使えるのか」と暗に将来わが家となる建物が感染症患者の滞在施設として使われるのを拒む様子がありありと見えた。同じように番組の取材に答えた不動産関係者は「今回のケースですと、印象的にあまり気持ちのいい話ではないので、資産価値が下がる」と述べ、こちらも明らかに迷惑顔だった。

一方、SNSなどでは「選手村活用とコロナ対策の一石二鳥」「病床や人工呼吸器の増設が必要だ」と、賛同する意見が目立つ。

医師が「普通のマンションをコロナ病院にするの無理」と断言するワケ

フリーランスの麻酔科医として関東地方の病院で働く筆者は、今のところ新型コロナ患者を直接診療したことはない。だが、主に手術時に麻酔科医として立ち合い、毎日のように人工呼吸器も使用する仕事を20年以上続けている。

その経験から断言できること。それは、「もともとは選手村の分譲マンションを新型コロナ感染症病床にリノベーションするのは、事実上不可能」ということである。なぜなら、マンションの間取りに感染症患者向けの医療用具をそろえることはできないからだ。

感染症病床には必要不可欠なものが多い。