「平常ベース」に戻す術が考えられていない
政府の財政出動でも次々と「禁じ手」が繰り出されている。全国の小中高校を休校にしたことで、仕事に行けなくなった保護者に休業補償手当を支給することに踏み出したが、対象が「フリーランス」などにも拡大。消費の底割れを防ぐために国民全員に給付金を支給するという検討も始まった。中小企業への納税の猶予や、所得税の定率減税、消費税率の引き下げなど、まさに「何でもあり」の大盤振る舞いになりつつある。
新型コロナの蔓延で経済活動が一気に凍りつきつつあるため、非常時の対策を打たなければならないのは間違いない。だが、誰も「バラマキだ」と批判できないムードの中で、なし崩し的に「禁じ手」がまかり通っていっていいのだろうか。
いずれ新型コロナは収束する。その時に、思いっきり緩めた金融をどう締め戻すか。じゃぶじゃぶに支出した財政政策のツケをどう回収していくか。消費減税に踏み切った場合、経済に影響が出ないようにどうやって税率引き上げを実施するか。金融や財政を平常ベースに戻す術も考えて緊急対策を打つ必要がある。なりふり構わない対症療法を繰り出し続けることで、かえって金融システムや国家財政を破綻させることになっては元も子もない。