市場は「マイナス金利の本格化」を求めていた
かなり思い切った追加金融緩和だったが、市場の反応は冷たかった。
当日の、3月16日の東京株式市場では政策決定会合の前倒し開催というニュースを受けていったんは日経平均株価が上昇したものの、緩和策の内容が伝わると大きく下げ、結局429円安の1万7002円で引けた。
翌17日の日経平均株価も荒い値動きとなり9円高で取引を終えたが、18日は284円安となり、3年4カ月ぶりに1万7000円を下回った。
株式市場が反応しなかった最大の理由は、マイナス金利政策の「深掘り」を見送ったことにある。米国のFRB(連邦準備制度理事会)が前日の3月15日に臨時の会合を開き、事実上のゼロ金利政策と量的緩和策を同時に導入する異例の危機対応に乗り出した。
当然、これによって日本と米国の実質金利差が縮小するため、円高が進行し、株安が続くという見方が広がった。これを止めるためには日本もマイナス金利を本格化させることが必要だと市場は考えたわけだ。
政策決定会合後に会見した黒田東彦日銀総裁は、必要ならば「躊躇なく追加的な緩和措置を講じる」と発言した。現在マイナス0.1%になっている「政策金利」についても「深掘りは可能だ」と語った、というのだ。
民間金融機関を支える「補助金」的な性格
実は、日銀はマイナス金利政策を取っているとは言っても、民間金融機関が日銀に預ける「当座預金」のすべてにマイナス金利を適用しているわけではない。残高のうち「政策金利残高」と呼ばれるごく一部分にだけマイナス0.1%の金利を適用しているのだ。基礎残高と呼ばれる部分にはいまだに0.1%のプラス金利を付けているし、基礎残高と政策金利残高の中間は「ゼロ金利」にしている。
2020年2月の日銀当座預金の平均残高は377兆円にのぼる。このうち半分以上の208兆円には0.1%のプラスの金利が付き、146兆円がゼロ金利、マイナス金利が適用されているのは、わずか22兆円。当座預金全体の6%弱にすぎないのだ。
黒田総裁は「躊躇なく」深掘りすると言っているが、そもそも日銀の言うマイナス金利政策自体、「本気度」が疑われてきた。日銀から民間金融機関に当座預金金利として年に2000億円が流れている計算だが、民間金融機関の経営を下支えする一種の「補助金」的性格を持っている。