筆者も3月2週目に、日航系のホテルで小さな会合を開催したが、通常は当日の欠席者が発生した場合に取られる「料理代」もまったく取らないという異例の対応ぶりだった。むしろ、こんな時に中止にせず開催してくれたお客様には感謝しかない、と声をかけられた。

ビュッフェ形式で料理を提供しているレストランも、当面休業にしたり、テーブルまで料理を運んでくれるオーダーバイキング形式にして提供したりするなど対策に追われている。

収益構造からみれば、まったく割に合わないはずだ。ただ、従業員が暇を持て余しているので、苦肉の策というか、「遊ばせておくよりまし」といった論理で営業が続いている。が、長くは続けられないだろう。

京都の旅館は「収入ゼロ」が続出

中小や新興のビジネスホテルはさらに深刻で、稼働率6割減、7割減というのもざらだ。それも宿泊単価を大幅に下げたうえでだから、売上ベースでみれば目も当てられない。

夜9時の祇園。こんなに人がいない光景を見るのは初めて(写真提供=筆者)

なかでも最も壊滅的な打撃を受けているのは、修学旅行生向けの団体専門旅館だ。

京都のホテルの業態は、観光客やミドルアッパーのビジネスマンを対象にしたシティホテル、宿泊特化型のビジネスホテル、さらに安価なホステルなどの簡易宿泊所、観光向け旅館、そして、観光客等団体専門の旅館に分けられる。いうまでもなく修学旅行のメッカ、京都では、年間100万人を超える安定した需要があり、特定の老舗旅館がこれを受け持ち、年間の大半を全館貸し切り状態にして運営している。

これらの旅館は、基本的に年間のごく一部の時期以外は一般客を取らず、売り上げの大半を修学旅行に頼っている。これらの旅館は何割減というレベルではなく、文字通り「売り上げゼロ」が続く。とくに安全性が重視される修学旅行は、新型コロナ問題が完全に収束するまで売り上げは見込めない。

悲劇はさらに続く。基本的にこれらの旅行は延期となるのだが、その時期が重なれば、予約をすべて捌ききれず、他のホテルに客が流れてしまう。たいへんな機会損失になるばかりか、リカバリーもできないのだ。

内部留保が潤沢にある会社はともかく、融資をうまく引き出せなかったり、必ずしも財務体質が強くない規模の小さなホテルや旅館はいよいよ行き詰まる。売り上げがゼロになった知り合いの旅館では、正社員の従業員に毎日掃除をさせているらしいが、ついに掃除させるところがなくなり、翌日から何をさせたらいいかと頭を抱えている。