アジアや欧米で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、他国に比べ感染検査の対象を絞り込んでいるのが日本だ。一部の専門家や野党から検査拡大を求める声が高まっているが、政府はその要求に従っていいのか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月17日配信)から抜粋記事をお届けします。

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検査結果が陽性なら無症状・軽症でも医療現場への負担が大きい

新型コロナウイルスに感染したかどうかはPCR検査というもので判断する。日本はこの検査が少ない! と、特にメディアや一部の専門家から徹底的な批判の声が上がった。朝、昼、夕方のすべての情報番組では、一貫して、希望者全員に検査をしろ! という論調だった。

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この声に押されて、野党国会議員は、検査拡大を安倍政権に強く要求し、安倍政権も世論に押されて、検査拡大を政府の方針としてしまった。

写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです。

もちろん必要なところで検査をするのは当然である。しかし、組織の対応能力「全体」との兼ね合いで総合判断しなければならない。左に検査拡大の重り、右に日本全体での対応能力の重りを乗せるシーソーのようなものだ。このバランスを取ることがまさに政治家・トップに求められるマネジメント能力である。

単純に検査拡大、つまり左の重りを主張する者は、検査数が増えることによって、日本の医療機関対応がどうなるのかの「全体像」、つまり右の重りが見えていないのだと思う。

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検査して陽性反応が出てしまうと、たとえその人が無症状者や軽症者であっても、専門医療機関に入院させ、自治体の感染症対応機関によって濃厚接触者の調査が行われる。現在の仕組みでは大変な作業が発生することに変わりがない。ゆえに検査が増えれば増えるほど、医療機関や感染症対応機関における負担が著しく増え、現場は疲弊する。そのことによって、本来救わなければならない重症者に対して、医療がサポートできなくなる危険性が高まってくる。

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イタリアなどではこの医療崩壊が生じていると報じられている。手軽な検査を拡大したがゆえに、軽症者もどんどん病院にやってきて、肝心の重症者に手が回らなくなってしまっているらしい。医療スタッフも医療機器も対応能力の限界を超えてしまったとのことだ。

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