ANAは中国本土へのフライト6割減
新型肺炎は、世界の航空業界に大きな混乱を与えていると考えられる。中国向けをはじめ各国の航空旅客便が削減されているのはそれを考える良い材料だ。一例として、2月20日から3月28日まで、ANAは羽田‐上海路線をはじめとする中国本土へのフライトを6割減らし、週64便とすることを決めた(2月13日時点)。
航空旅客便の削減などによって、世界的に航空関連の株価は不安定に推移している。その背景には、新型肺炎により人の移動に大きな支障が生じ、旅客収入などが落ち込むといった懸念があるだろう。
海外の航空業界も、新型肺炎への対応に追われている。中でも、韓国の航空業界はかなり厳しい状況に直面しているとみられる。新型肺炎が発生する以前から、韓国の航空各社は複合的なリスク要因に直面してきた。
その一つに、世襲経営の限界などから経営が混乱し収益力が低下したことがある。その上、日韓関係の冷え込みによってわが国への観光客が減少し、旅客需要が落ち込んだ。この結果、昨年4~6月期、韓国では航空全8社が営業赤字に転落した。新型肺炎の発生は、韓国の空運需要をさらに低下させ、業績懸念は一段と高まっているようだ。
香港航空は400人以上をリストラ
また、香港の最大手キャセイパシフィックでは、長引く反政府デモの影響からの旅客数が減少した。新型肺炎が発生し、中国本土便が削減され、同社経営陣は従業員に3週間の無給休暇を取得するよう求めている。キャセイは感染への懸念などから、香港‐成田間のフライトも減便する。香港の中堅航空である香港航空では利用者の減少から400人以上のリストラを進める方針を明らかにした。
欧米の航空会社も、中国本土を結ぶ航空便の削減や全休に踏み切っている。米国政府が中国への渡航中止を勧告したことを受けて、アメリカン航空は中国本土向けの全便を停止している。感染への懸念から、中国本土以外の国とのフライトを削減する企業が増える可能性もある。
世界の航空会社が中国本土を中心にフライトを削減していることは、世界経済の下振れリスクが高まりつつあることの裏返しと考えられる。基本的に、経済が活性化するためには、より多くの人が自宅から出ることが必要だ。
外出すると外食などの支出が増える。反対に、人が家に閉じこもると、経済のダイナミズムは高まりづらい。一例として、バブル崩壊後のわが国では、節約のために日曜日の夕方を自宅で過ごす人が増えた。その結果、特定のアニメ番組の視聴率が上昇した。一方、外食や小売りなどの業況が冷え込み、デフレ経済が深刻化した。