危惧するのは、ダイバーシティの遅れは日本と外国人の間だけではないことだ。中国企業の台頭により国際市場での競争がますます激しくなるなかでは、複数の企業が一丸となったコンソーシアムを形成した事業展開が求められる。政府は、オールジャパンというかけ声の下、官民の連携を強調しているが、グループを越えた企業連携には消極的なようにみえる。これらは、日本企業のオープンイノベーションが遅れてきた原因でもある。しかし、現地化やコンソーシアムなどのダイバーシティが遅れれば、30年近くかけて作り上げたアジアの集積地の力が衰えるかもしれないのだ。このことにもっと敏感になっていい。
ダイバーシティの促進には乗り越える課題も多そうだが、ダイバーシティはそもそも適材適所に人材を配置するという、ごく当たり前の行為ではないか。ラグビーでダイバーシティが効果的に進んだのは、きっと勝つという明確な目標が設定されていたからであろう。そうだとすれば、ダイバーシティを推進するためには、責任者・経営者がもっと現場を歩き、そこでの具体的な課題の把握と解決策を詳細に作る姿勢が求められる。
机の上の議論ではダイバーシティは生まれない。ダイバーシティができない組織は、まだ追い込まれていない余裕のある組織かもしれない。しかし、それでは令和時代を乗り越えるのはかなり難しいと思う。
「日本とアジア」から「日本のなかのアジア」へ
わが国の経済社会と企業がダイバーシティを進めるにあたって重要な視点は「日本のなかのアジア」にどう向き合うかということになろう。
昭和時代は「日本とアジア」という視点が基本であった。アジアでいち早く先進国となった日本は、アジアをけん引するリーダー的存在であったからだ。しかし平成時代には、韓国、台湾などから日本企業を上回る競争力を持った企業が出現し、中国経済の台頭は日本のプレゼンスを明らかに引き下げた。「アジアの中の日本」へとパラダイムを変えるべきだ。その対処法を、筆者は『新貿易立国論』(2018年文春新書)として記した。
そして令和時代は、東南アジア諸国を含めてアジア全体でデジタル化が進み、さらに下剋上的な競争が加速する。グローバル化は、モノ、マネー、情報だけでなく、人の動きにも波及する。日本の外国人観光客は2019年も昨年同様に3000万人を超えた。そのうち8割がアジアからの観光客である。このようななか安倍政権は、少子高齢化と人口減少で縮む市場を活性化するため、外国人観光客の誘引策(インバウンド政策)を相次いで発表している。その方向は間違っていないだろう。
すでにアジアの若者たちの行動は、スマートフォンでの情報を得ながらスピードアップしている。日本の魅力が高ければ、経済社会と企業を一緒に支えてくれるアジアの人たちは増える。2019年4月に政府は国内の労働力不足を補うために、外国人の就労規則を緩和した(改正出入国管理法の施行)。
その実質的な対象がアジアに向けられているのは明らかである。国際社会では、トランプ米国大統領の独特の政策、英国のEU離脱の背景に外国人労働者の増大があったという時代に、日本はあえて外国人との接触面を拡大した。政策立案者にはそれなりの覚悟があったに違いない。