「お雇い外国人」でも「助っ人」でもない外国人

幕末から明治維新にかけて外国人はわが国の経済社会の基礎作りに貢献してきた(「お雇い外国人」とも呼ばれた)。スポーツ界でも、たとえばプロ野球では、外国人プレーヤーが日本の技術レベルを引きあげてくれた(「助っ人」と呼ばれた)。そこでの外国人は特別扱いであった。

これに対して、ワールドカップの日本チームの外国人は「お雇い外国人」にも「助っ人」にも見えないのだ。日本人とともに目的を果たすため、日本の持ち味を重視し、それを磨くという新しいダイバーシティ(組織の多様化)の形を提示してくれたようにみえた。

もっとも、外国人プレーヤーが日本を磨くというのは、今回ラグビーで初めて見られたものではない。私が大好きな大相撲では、ずいぶん前から起こっていることだ。大相撲を盛り上げてくれたのは、ハワイ出身の力士(曙、小錦、武蔵丸)、近年はモンゴル出身の力士(白鵬、鶴竜、日馬富士)である。彼らは、日本のしきたりをしっかり守ってくれたし、それだけでなく、相撲の持ち味までも進化させるように貢献してくれた。現在、幕内で8人、十両で8人が外国人力士だ。

ダイバーシティは当たり前の行為

スポーツの世界とは打って変わって、わが国の経済社会や企業レベルでのダイバーシティは遅れていると指摘されている。たしかにスポーツとは同列で扱うことはできない。単純なダイバーシティは、組織の伝統的な価値観に修正を迫るかもしれないし、それはかえって組織の長所を失わせる結果になるかもしれない。その気持ちはわからないわけではない。しかし変革は、いつもリスクを伴うものだ。

たしかに、昭和時代は、ダイバーシティが遅れても経済社会や企業は成長を遂げることができた。しかし、平成時代の経済社会と企業の停滞は、おそらくダイバーシティの遅れと無関係ではないだろう。そして令和時代は、ダイバーシティが実現しなければ衰退する時代になるかもしれない。

なぜなら、日本を取り巻く環境が大きく変わったからだ。日本のプレゼンスは世界のGDPに占めるシェアでいえば、2000年の14.4%から2019年には6.0%に低下している。日本企業が高い質だけで勝ち残れる時代は完全に終わった。国内市場が縮小するなかで国際競争力を強化したいのなら、各国の激しい市場変化に柔軟に対応できる多様化した組織を持つことだ。欧米の多国籍企業は人材抜擢で、中国企業はM&Aで組織のダイバーシティを加速させているなか、日本企業に残された時間はほとんどない。

この点は、30年間、日本企業のアジアでのビジネス展開をリアルタイムで見てきた筆者が常々実感してきたところだ。

アジアにある日系企業の現地法人において、いまだ現地化(現地スタッフがすべてを運営すること)が課題である。まず毎年の事業計画を日本本社に頼るという状況から早く脱することから始めることであろう。さらに現地で採用された従業員が幹部に昇進できるシステムを整備し、日本本社での役員への道をも切り開くべきだ。