産経社説も「おかしい」と批判する施政方針演説

1月21日付の産経新聞の社説(主張)も安倍首相の施政方針演説を「おかしい」と批判する。

「政治や行政への不信を招く問題もそうである。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件や昨年10月に公選法違反疑惑で辞任した元閣僚2人らの問題、『桜を見る会』をめぐるずさんな公文書管理への言及を避けたのはおかしい。扱いを誤れば国民の不信が一層増し、国政の停滞を招く。首相はもっと丁寧に国会や国民に語りかけるべきだ」

前述したように、沙鴎一歩は一連の事件や問題について安倍首相が言及しなかったのは、故意的で異常だと思う。不信が増大すれば、国政は停滞する。

しかし産経社説の次の冒頭部分を読むと、その主張が偏っていないかとの懸念も抱く。

「だが、国の基本に関わる皇位の安定継承問題への言及はなく、安全保障の根幹をなす対中政策についての説明は不十分だった。極めて残念だ。国会での活発な論議が必要である」

確かに「皇位の安定継承」も「中国政策」も重要な課題だ。だが、新聞の社説として、その2つばかりを論じていていいのだろうか。新聞としての主張が先に立ち、重要な課題に触れないようであれば、読者もついてこないのではないか。

「成長戦略を強化し、生産性を高める狙いは妥当」と評価する読売社説

読み比べてみると、朝日、毎日、産経、日経、東京の各社説はどれも安倍首相の施政方針演説を批判している。批判していないのは読売新聞だけである。

1月21日付の読売社説は「施政方針演説 先送りせず長期的課題に挑め」との見出しを付け、こう書き出す。

「与野党は、日本の将来像を大局的に論じなければならない」
「通常国会が開会した。安倍首相は令和初の施政方針演説で、『社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく』と語った」
「最大の懸案は、人口構造の変化への対応である。団塊の世代がすべて2025年には75歳以上になり、医療費の膨張が懸念される。その後、40年ごろにかけて、生産年齢人口は急減していく」
「将来世代が社会保障の恩恵を受けられるよう、制度の持続性を高める方策が必要となる。高齢者や女性が働きやすい環境を整備することが不可欠だ」

読売社説は社会保障など日本の将来をどうするかということ、つまり国のかたちを国会で議論する重要性を説いている。

そのうえで「成長戦略を強化し、生産性を高める狙いは妥当である」として安倍首相の政治姿勢を評価する。