安倍首相は「桜を見る会」の問題を突かれたくない

朝日社説は最後に主張する。

「昨年の通常国会では、参院選への悪影響を懸念した政権の論戦回避が極まり、首相が出席した予算委員会の開会時間は第2次政権下で最短となった。秋の臨時国会も、桜を見る会の追及を振り切るため、政権は幕引きを急いだ」
「あすの衆院の代表質問から国会の論戦が始まる。政権の『説明放棄』を許さぬ、野党の力量が試される」

安倍首相は桜を見る会の問題をよっぽど突かれたくないのだろう。幕引きを急いでいるように映る。この問題の本質は、首相による公的行事の私物化だ。それにもかかわらず、安倍政権は公文書管理という問題にすり替え、官僚の処分という形で幕引きを図ろうとしている。実に情けない政権である。

「五輪の政治利用だと言わざるを得ない」

「首相の施政方針演説 五輪頼みでごまかすのか」との見出しを掲げて批判するのは、1月21日付の毎日新聞の社説だ。

毎日社説は「7年間の政権運営をどう総括し、残る任期で何を成し遂げようとしているのか。安倍晋三首相の施政方針演説に具体的な説明はなかった」と書き出し、こう批判する。

「驚いたのは相次いだ政権の不祥事に一言も触れなかったことだ」
「さらに目についたのは、不都合な現実から目を背ける姿勢だ」
「首相は東京五輪・パラリンピックを契機に『国民一丸となって新しい時代へと踏み出していこう』と呼びかけた。高度経済成長下で行われた56年前の五輪と重ね、国威発揚に利用するかのような印象を受ける」

今年夏の五輪と前回の東京五輪とを無理に結び付けている。安倍首相は「復興五輪の成功」との表現も使ったが、これも東日本大震災からの復興と無理やり結び付けているところがある。

安倍首相の言葉には重みがない。そのことは、2006年9月の第1次内閣発足直前、安倍首相が51歳のときに出版した『美しい国へ』(文春新書)を読めばすぐに分かる。この著書の内容は安倍首相が信じる保守主義を強調したものに過ぎず、読者は「何が美しい国なのか」と考え込んでしまう。

最後に毎日社説は書く。

「五輪に乗じて根拠なき楽観ムードを振りまき、国民の目をごまかそうとしているのだとすれば、五輪の政治利用だと言わざるを得ない」

「五輪の政治利用」。安倍首相は桜を見る会だけではなく、オリンピックまでも政権維持に利用しようとする政治家なのである。