真摯な反省や再発防止への決意すら語ろうとしない

安倍首相は1年前の施政方針演説では、厚生労働省などで相次いだ統計不正問題について「国民の皆さまにおわび申し上げる」と謝罪していた。なぜ、桜を見る会やIRの汚職事件に対しては謝罪しないのか。

政府は「会は本年中止し、予算も計上していない。汚職事件の方は捜査中の個別案件だ」(西村明宏官房副長官)と説明するが、こんな説明でだれが納得するだろうか。まだ国会は始まったばかりである。はぐらかすことなく、野党の質問にはきちんと答弁してほしい。

新聞各紙の社説はほとんどが安倍首相の施政方針演説に批判的だ。特に厳しい朝日新聞の社説(1月21日付)は、「通常国会開幕 『説明放棄』は許されぬ」との見出しを付け、こう指摘していく。

「桜を見る会をめぐっては、首相による私物化への批判にとどまらず、招待者名簿の扱いが公文書管理法に違反していたことを政府自身が認めた。『国民共有の知的資源』とされる公文書のずさんな管理は、民主主義の土台を揺るがす。真摯な反省や再発防止への決意すら語ろうとしないのはどうしたことか」

「さらりと述べた」という表現にみる朝日社説らしさ

「カジノを含む統合型リゾート(IR)への参入疑惑は、内閣府元副大臣の秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕されたほか、中国企業側が他の衆院議員5人にも現金を配ったと供述するなど、広がりを見せている」
「首相は演説で、問題などないかのように『厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組む』とさらりと述べた。政権が成長戦略の柱に掲げるIRの正当性が根底から問われているというのに、これで国民が納得すると思っているのだろうか」

「真摯な反省や再発防止への決意」は当然であり、「IRの正当性が根底から問われている」との厳しい現実を直視すべきである。「さらりと述べた」という微妙な表現には安倍政権を嫌う朝日社説らしさがみられる。