昨年末の在イラク米大使館襲撃で事態が大きく変わった

選択肢にはイラク民兵組織への空爆やイランの艦艇やミサイル施設に対する空爆もあったという。

トランプ氏が最初に選んだのは民兵組織への空爆だった。事実、アメリカの国防総省は12月29日、イランが支援するイスラム教シーア派武装組織「カタイブ・ヒズボラ」のイラクとシリアの拠点5カ所を空爆したと公表した。

だが、その後の31日に在イラク米大使館が襲撃され、事態ががらりと変わり、トランプ氏はスレイマニ司令官の殺害を選択した。アメリカ軍幹部には予想外の選択だった。イランの報復が懸念され、案の定、イランはイラク国内の米軍駐留基地を弾道ミサイルで攻撃した。そしてこの攻撃が旅客機誤射に結び付いてしまった。

相手を挑発して追い込み、その後に和解の条件を示す

相手をとことん挑発して追い込み、相手が反撃しそうになったところで条件を示して手を握ろうとする。これがトランプ氏のやり方である。

核・ミサイル開発を止めようとしない北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長との交渉を見ればよく分かる。当初は弾道ミサイルを次々と発射する金正恩氏を「ロケットマン」などとあざけり、金正恩氏がその挑発に乗ってくると、今度は一転して相手の意に沿うように見せかける。具体的には初の米朝首脳会談を実施するなどして好意を示し、ミサイル開発を中止する条件をのませようとする。

ここで沙鴎一歩は言いたい。危険な国との交渉は、商売人のトランプ氏が得意としてきたディール(取引)は役に立たない。役立たないどころか、挑発されることで、本気で攻撃を仕掛けてくる国もある。今回のイランがいい例だ。

相手の国の内も単一ではない。穏健派もいれば、武闘派もいる。軍部が力を持っていれば時に攻撃を仕掛けてくる。それが大きな戦争へと発展する危険性は十分にある。

北朝鮮との交渉は慎重に進めるべきだ。北朝鮮には核兵器が存在し、その核兵器を長い距離で飛ばすことができるミサイルもある。イランとは違う。トランプ氏はイランとの交渉の失敗で、民間機の撃墜という大惨事を招いた。そこを深く反省してほしい。